5. ページ5
入学式の次の日は生憎の雨模様。
新しく買ったばかりだという赤い傘をさしたりっちゃんと肩を並べて学校へ向かう。
話題は昨日知らされた今月末にあるテストについて。
「入ったばかりなのにもうテストか〜嫌になっちゃうよね」
「そうね。でも範囲は中学の内容だって言うし、きっと大丈夫よ」
「Aはそうかもだけど」
「じゃあ一緒に勉強しましょ？その方が捗るかも」
「うん！今日からやる？」
「そうね…」
「あ！立花！」
りっちゃんとの会話に割り込むように校舎の上の方から声が降ってくる。
登校時間にはまだ早く生徒の姿もまばら。
しかも入学したての私の苗字を呼び捨てにする人なんて担任ぐらいしか……
上を見上げると予想通り3階の窓から二宮先生がこっちを見下ろしている。
「運んでもらいたい物があるから生物室まで来てくれるか？」
ほら。言った通り人使いが荒い。
入学したての1年に雑用頼む担任がいてどうするのよ。
「委員長とは名ばかりの雑用職…」
「ま、まだ学校生活始まったばかりだから！わかんないじゃん！ね？」
気を使ってくれるりっちゃんには悪いのだけれど、苦労するのが目に見えてしまって乾いた笑いしか出ない。
「私も手伝おうか？」
「ううん。私に頼むぐらいだし、そんなに大変じゃないと思うから大丈夫。申し訳ないんだけど鞄持って行ってくれる？」
「オッケー。頑張ってね！」
先行ってるねと笑うりっちゃんに鞄を渡して手ぶらで生物室へ。
うだうだしていないで嫌なことはさっさと終わらせるに限る。
「失礼します」
「お、来た来た。配る予定のプリントが思ってたよりも量多くてさ。手伝ってくんない？」
私を朝から憂鬱な気分にさせた元凶の先生は、マグカップ片手にニヤリと笑っていて。
示された机の上には確かにプリントが山積みになっている。
ええ？これ全部二人で運ばなきゃいけないの？
「あの、これどう見ても二人じゃ……」
「よろしく」
重そうだと訴えてもにこやかに受け流されて。
仕方なく一山抱えたものの、重たすぎてバランスを崩しかけてしまう。
「うわっ！危な！」
ぐらつく体を支えてくれたのは二宮先生とは別の先生。
白いワイシャツにベストと赤いネクタイがお似合いのその先生に、大丈夫？と聞かれて慌てて頭を下げた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 325人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：紫苑
| 作成日時：2020年6月30日 23時
