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雅紀くんの満面の笑みにつられてこちらも笑顔になる。
「Aちゃん大人になったね」
「何それ。雅紀くんはあんまり変わらないね」
「ええ？俺も大人になったんだけどなぁ」
けらけら笑う雅紀くんと私を見て、満足そうに頷いた智くんはふらりと花の中に消えていく。
「あれ智くん？」
「ん。ちょっと待ってて」
…もう、自由なんだから。
ふらふら彷徨っている智くんは無視して雅紀くんにお店の中を案内してもらうことにする。
「そっか、Aちゃん調香師になったんだね」
「うん。香水とか化粧品はね、嫌いじゃないの」
「知ってる！昔から綺麗なもの好きだったもんね。俺があげた花も大事にしてくれてたし」
懐かしいあの頃の話をしながら花が入れられているバケツを見てまわる。
「あ、この花」
ふ、と目を惹かれたのは私にとっては見慣れた紫色の花。
「ライラック？Aちゃん好きなの？」
「好き…うん、まあそうかも。ちょっとした思い出があって。あっちで初めて作った香水がこれの匂いだったんだよね」
「あっちってフランス？」
「うん。フランスでは結構メジャーな花なの」
懐かしい気持ちで見入ってしまう。
そもそも私が調香師になろうと思ったのは、祖父手作りの香水を祖母がよく自慢していたから。
きっかけにもなったその香水はライラックの香り。
私が学校の課題で最初に作ったものも同じライラックの香水だった。
初めて作った香水は到底商品になるようなものではなかったけれど、大切に今でもとっておいてある。
「ライラックといえば初恋って花言葉があってさ。素敵だよね」
「…ふーん」
ニコニコと笑う雅紀くんには申し訳ないが、私の初恋は実りようがないからこっちを見ないでほしい。
「へえ、いいね」
「わ！智くん！」
いつの間に戻ってきたのか私の隣には智くんが立っていて、ライラックに鼻を寄せて匂いを嗅いでいた。
「ん、いい匂い」
ふんわりと笑うその横顔にやっぱり好きだなあとじんわり思ってしまって。
ああもう、観念した。
こうなったらとことんこの初恋を引き摺って生きてやる。
誰に迷惑をかけるわけでもなし、いいでしょう？
いつか自分で決着がつけられるまで、みっともなくても想い続けていよう。
「これ買って帰る」
「お！毎度ありー！」
「なんか魚屋さんみてぇだな」
「残念おしゃれなお花屋さんですぅ」
ふざけた会話を続ける二人を見ながらそう心に決めた。
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とも(プロフ) - おはようぉございます。正に嬉しくて号泣です。お互いの気持ちが繋がった。素敵なお話をありがとうございました。 (2020年12月12日 7時) (
レス) id: bd0ebe94fc (このIDを非表示/違反報告)
紫苑(プロフ) - 柚さん» コメントありがとうございます！今回の更新でその気になった箇所をきちんと回収できていると思うので…楽しんでいただけたら嬉しいです。 (2020年12月7日 23時) (レス) id: 217cb95def (このIDを非表示/違反報告)
柚(プロフ) - いつも楽しく読ませて頂いています^ ^なんで息を呑んだのか気になりますねぇ(^-^)♪ (2020年11月24日 8時) (レス) id: c036a1a7fd (このIDを非表示/違反報告)
紫苑(プロフ) - 橘花さん» 前のシリーズから！長く読んでくださってありがとうございます(*^^*)自信満々の翔さん格好良いですよね…あと二人も頑張ります！！ (2018年6月26日 11時) (レス) id: 00c99a5500 (このIDを非表示/違反報告)
紫苑(プロフ) - まいさん» 強気×強気、良いですよね。まだまだ書き足りない事もあるので続編も考えてはいます(^-^)残りの二人も頑張りますね！ (2018年6月26日 10時) (レス) id: 00c99a5500 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：紫苑
| 作成日時：2017年3月15日 20時
