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「お前は調香師の勉強するためにフランス行ってから全く連絡してこなくなったもんな」
「いいでしょ別に。忙しかったのよ」
からかうように言葉を紡ぐ兄を睨みつける。
私が智くんに長年恋をしていることは兄にバレているのでこんな風に良くからかってくる。
「で、やってくれんの？報酬はちゃんと出すよ」
「引き受けますよ。こんないい話断るわけないでしょ」
それにあんな挑発されちゃ断れない。
そういう私の性格も全部わかってやってるんだろうから本当に性格が悪い。
兄が見せる相変わらずの手腕にため息が漏れそうになる。
「よし。じゃあ後は大野さんに詳しく聞いて。俺は会議があるからもう帰るわ」
「え？ちょっと」
満足そうに頷いた兄は忙しげに椅子から立ち上がる。
ぽかんとその後ろ姿を見送りそうになって、慌てて後を追って店の外に出る。
「ちょっと待ってよ！」
車に乗り込む寸前に呼び止めた時には”社長”の顔になっていて一瞬たじろぐ。
「あの、えっと」
困った、呼び止めたものの何を言えば良いのか分からない。
今更『元気ですか？』とか『どうして急に連絡してきたの？』とか聞くのもおかしいし。
「A」
黙って私を見ていた兄が口を開く。
「元気そうで安心した」
その言葉にぐっと胸が詰まった。
智くんのことだけじゃない。
求められるまま社長令嬢でいるのが嫌で日本を飛び出してから私は実家とは距離を置いていた。
私が久し振りだと感じるのと同じように兄がそう思うのも当然のことだ。
「たまにでいいから実家にも顔出せ。お前が”櫻井”の名前を気にしてるのもわかるけどお袋が寂しがってる」
「…はい」
「正直いうと俺も寂しい」
「うっそ！」
「嘘じゃねぇよ」
はは、と声をあげて笑う兄は存外優しい顔をしていて昔のようにぐしゃっと頭を撫でられる。
「ご、ごめん」
「まぁ？大野さんを使ってお前をからかうのも久し振りで楽しかったしな」
「お兄ちゃん！！」
聞き捨てならない言葉に噛み付くと殊更おかしそうに笑われる。
「社長、そろそろ」
「ああ。悪い」
運転手らしき人に声をかけられると直ぐに兄は”社長”の顔に戻る。
「では櫻井Aさん、新商品の件よろしくお願いします」
「…はい。良いものをお届けしてみせます」
兄妹の情だけじゃない。
兄は私にできると思ってこの仕事を任せてくれたんだ。
その期待には応えないと。
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とも(プロフ) - おはようぉございます。正に嬉しくて号泣です。お互いの気持ちが繋がった。素敵なお話をありがとうございました。 (2020年12月12日 7時) (
レス) id: bd0ebe94fc (このIDを非表示/違反報告)
紫苑(プロフ) - 柚さん» コメントありがとうございます！今回の更新でその気になった箇所をきちんと回収できていると思うので…楽しんでいただけたら嬉しいです。 (2020年12月7日 23時) (レス) id: 217cb95def (このIDを非表示/違反報告)
柚(プロフ) - いつも楽しく読ませて頂いています^ ^なんで息を呑んだのか気になりますねぇ(^-^)♪ (2020年11月24日 8時) (レス) id: c036a1a7fd (このIDを非表示/違反報告)
紫苑(プロフ) - 橘花さん» 前のシリーズから！長く読んでくださってありがとうございます(*^^*)自信満々の翔さん格好良いですよね…あと二人も頑張ります！！ (2018年6月26日 11時) (レス) id: 00c99a5500 (このIDを非表示/違反報告)
紫苑(プロフ) - まいさん» 強気×強気、良いですよね。まだまだ書き足りない事もあるので続編も考えてはいます(^-^)残りの二人も頑張りますね！ (2018年6月26日 10時) (レス) id: 00c99a5500 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：紫苑
| 作成日時：2017年3月15日 20時
