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それから数日、仮眠室に篭ろうとしたところを看護師に呼び止められる。
「二宮先生、新しい工学技士の方が挨拶にいらしてます」
「え、技士さん変わったの？」
教授の話を聞いていないことに顔を顰められ、ため息を吐かれるのはいつもの事。
「興味ないことは聞いてもすぐ忘れるんだよ俺は」
「……さすがですね」
しらっとした目で見てくる看護師に軽く手を振って説明するよう促す。
「ご家族の介護だとかで前任の水島さんが退職されて、新しい方が来るって説明されていましたよ。まだ若い方なので最初はベテランの小路さんとペアで仕事されるって」
「へえ」
そこまで説明されても全く思い出せない。
というか前任の名前と顔も微妙に一致しない。
「先生こちらです」
「…失礼します」
看護師に案内された部屋に入って、足が一瞬止まる。
窓から外を見ていた女性がこちらを振り向く。
ああ、最後に見た顔より随分と健康そうだ。
……綺麗になったな。
「前任の水島に変わって担当になりました。初めまして中村Aです」
挨拶を続けようとするのを制し、彼女が差し出してきた名刺をひったくるようにして奪う。
「は？お前なんで」
「あら。初対面なのにそんな乱暴な言い方しないで下さいよ」
「初対面？」
「はい。初めまして、ですよね？」
にこ、とやけに迫力の増した笑みで詰め寄られて彼女との会話を思い出す。
『ナイチンゲール症候群』
患者と看護師の間に生まれる恋愛感情を引き合いにして彼女からの言葉を拒否した。
偉そうにいい大人ぶって諭しておいて、本当の俺は大切だと認めた相手を失いたくなかっただけの卑怯者。
それなのに、まさかこんな行動に出るなんて誰が想像したよ。
「あの…先生？」
黙ったまま何も言えないでいる俺を見て彼女の表情が不安そうなものに変わる。
『いつまでも意地はってると損するよ！』
どう答えるべきか考えていた最中に耳に蘇るのは数日前に同期に言われた言葉。
うるさい、俺だってわかってるよ。
あれから向日葵を直視できなくなった自分のバカさにいい加減うんざりしてた所だ。
こんな俺とでも新しく始める事をお前が望むなら。
「…初めまして。二宮です」
そう返事をしてやると途端に彼女がほっとした顔になる。
ああ、クソ。
そんな顔で笑われたら色々考えてたのがどうでも良くなるだろ。
でもまあ…これで心置きなく口説けるってことで。
それは悪くないなと考えて口元を緩めた。
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紫苑(プロフ) - りえさん» リクエストありがとうございます。『ハラグロなふたり』の続きですね。鋭意創作中ですので今しばらくお待ちください！ (2021年1月4日 13時) (
レス) id: 217cb95def (このIDを非表示/違反報告)
紫苑(プロフ) - すずさん» コメントありがとうございます。赤菊の君の人気ぶりにびっくりしてました！喜んでいただけて嬉しいです。 (2021年1月4日 13時) (レス) id: 217cb95def (このIDを非表示/違反報告)
紫苑(プロフ) - ゆっこさん» リクエストありがとうございます。潤くん視点のお話書かせていただきました！ (2021年1月4日 13時) (レス) id: 217cb95def (このIDを非表示/違反報告)
紫苑(プロフ) - mihoさん» リクエストありがとうございます。Lapis lazuliの続きですね！承知しました。ただいま創作中ですのでしばしお待ちください！ (2021年1月4日 13時) (レス) id: 217cb95def (このIDを非表示/違反報告)
紫苑(プロフ) - るきさん» リクエストありがとうございます。『赤菊』の翔さんサイドを書かせていただきました！大野さんのお話はもうしばらくお待ちくださいね。 (2021年1月4日 12時) (レス) id: 217cb95def (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：紫苑
| 作成日時：2017年1月23日 20時
