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この人の言動に泣きそうになるのはザラに有ることで。
「そうですか。なら、帰りますね」
良く出来た偽物の笑みを貼り付けて立ち上がる。
そんな私に対してカズさんは何も言わなくて。
対照的に大野さんがこっちを見ているのが少し気になった。
「おくろうか？」
「え？」
玄関へと歩いていた私の背にかけられたのは大野さんの優しい声。
振り返るとニコニコしている大野さんの向こうに不機嫌な顔をしたカズさんが見えた。
「同じマンションなんだからいらないでしょ」
私が何かを言う前にカズさんが冷たく吐き棄てて。
「まぁ、ちっと行ってくるわ」
そんなカズさんの態度も気にせずに大野さんは笑いながら私の隣に来る。
「……好きにすれば？」
イライラしたままカズさんは寝室の方に消えていく。
ここまで不機嫌さを引きずるカズさんは見たことがなくて、大野さんの顔を縋るように見てしまう。
「ふふ、大丈夫だよ」
「でも…」
「早く帰れってのもね？感染ると心配だからだよ、きっと」
「え？」
「ニノのはわかりにくいからねぇ、もっと素直になれば良いのに」
でもそうできたらニノじゃねぇや、と大野さんは一人でおかしそうに笑う。
「Aちゃんが来る前もね？おれ以外に心配してくれる人なんていないって拗ねてたの」
「そんなわけないのに…」
「だよねぇ、それにホントはAちゃんが来てくれて嬉しいくせに。ニノはさぁ、昔っからあんなんなの」
「なんとなく想像はつきます」
思ったことを素直に口に出すと、正直でいーねと言われて。
「めんどくさいけど、よろしくね？」
「はい」
ムリしすぎるから、と大野さんが言ったのはきっとカズさんを指してのことで。
それにもっともだと深く頷くと、笑いを引っ込めた大野さんに手を掴まれる。
「Aちゃんも、ムリしちゃダメだよ？」
「なに、がですか」
不意打ちに声が震えそうになるのを必死で隠して。
バレてないはず、と自分に言い聞かせる。
それなのに大野さんは追い打ちをかけてきて。
「泣きたい時に我慢すんのも、好きなのを我慢すんのもよくねぇぞ」
ひゅっと息を飲む音がして、それが自分の喉から聞こえたのだと自覚する間もなく大野さんの手を振り払う。
後ろも振り返らずにそのままエレベーターに駆け込んだ。
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紫苑(プロフ) - yukidarumakunさん» あとがきにも追記しましたが、この二人のその後を短編で書き始めました。ぜひ覗いてみてくださいね。 (2020年6月7日 16時) (
レス) id: 217cb95def (このIDを非表示/違反報告)
yukidarumakun(プロフ) - ものすごく楽しみです！またこの2人に会えるのを楽しみに日々の生活頑張ります。こんな時期ですので御無理のないよう創作して下さいね。 (2020年6月6日 19時) (レス) id: b586aa50e6 (このIDを非表示/違反報告)
紫苑(プロフ) - yukidarumakunさん» 労いのお言葉ありがとうございます。この後の二人については少し考えていることがあるので楽しみに待っていてください！続きを書いた時にはまたこちらでお知らせしますね。 (2020年6月4日 12時) (レス) id: 217cb95def (このIDを非表示/違反報告)
yukidarumakun(プロフ) - 完結お疲れ様でした。この後の2人も見たいですね。また、いつか続編読ませて頂ける日を楽しみたいしています。 (2020年5月31日 19時) (レス) id: b586aa50e6 (このIDを非表示/違反報告)
紫苑(プロフ) - めぐぽん(*´･∀･)さん» コメントありがとうございます。楽しみと言って頂けて嬉しいです。更新頑張りますね！ (2020年5月26日 23時) (レス) id: 217cb95def (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：紫苑
| 作成日時：2016年12月14日 22時
