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＊ここから主人公サイドに戻ります
＊＊＊＊＊
言うつもりのなかった言葉をカズさんに叩きつけてから彼とは話していない。
同じドラマの撮影が終わってからしばらく休みで、その後すぐに舞台の稽古に入った私とまた別のドラマの撮影が始まったカズさんでは生活リズムが異なる。
何しろ私が会いたくなかったからできる範囲で彼を避けていた。
最悪だ、絶対に言うつもりなんかなかったのに。
酔った勢いに加えて怒った時の自分の口の軽さに泣けてくる。
だってずっとカズさんはあの人の事を想っていて私になんか興味がないから、せめて彼が幸せになってくれればいいと思っていた。
それをこんな形で壊して、しかも私のことなんか見向きもしてなかった彼に憎しみに近い感情を抱いてしまう。
サロメの稽古が始まってカズさんのことは考える余裕なんて無くなった筈なのに、サロメの心情に触れるたびに蘇ってきてしまう。
{どうしてそんな表情をするの？}
{どうして私のことを見てくれないの？}
「{なんで愛してくれないの？}」
「Aちゃん！！」
名前を呼ばれた声ではっと我に返る。
そろりと視線を上げると心配そうにこちらを見る大野さんが映る。
そうだ、今日は稽古の帰りに大野さんのアトリエにお邪魔していたんだっけ。
「なに考えてた？」
「……サロメのこと、ですけど」
「本当？」
「え？それってどういう…」
「 ”なんで愛してくれないの” って口に出てたけど」
大野さんのその一言で血の気が引く。
アトリエの胸像を見てヨカナーンの首を思い出して、そこからサロメの心情に潜ってただけのつもりでいたけど。
私が考えていたのは本当にサロメの事？
カズさんに向けてた負の感情とは別物だって言える？
もしかして、自分でも気付かない内に侵食してきているのだとしたら。
「大野さん私、どうしよう。こんなになるの初めてで…」
役に飲みこまれて自分を見失うなって言われた時はそんなの私に起こるわけ無いと思っていたから平気だった。
でも実際になったら怖くて怖くて体が震えてくる。
どうしよう、どうしよう。
「だぁーいじょうぶ。大丈夫だよAちゃん。ちっと戻れなくなってるだけだって。おれが名前呼んだら戻れたじゃん」
落ち着け、怯えるなと大野さんの瞳が伝えてくれる。
あまり多くは喋らない人だからこそ、彼の瞳は雄弁に物語る。
その強い光に少しだけ震えがおさまった。
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紫苑(プロフ) - yukidarumakunさん» あとがきにも追記しましたが、この二人のその後を短編で書き始めました。ぜひ覗いてみてくださいね。 (2020年6月7日 16時) (
レス) id: 217cb95def (このIDを非表示/違反報告)
yukidarumakun(プロフ) - ものすごく楽しみです！またこの2人に会えるのを楽しみに日々の生活頑張ります。こんな時期ですので御無理のないよう創作して下さいね。 (2020年6月6日 19時) (レス) id: b586aa50e6 (このIDを非表示/違反報告)
紫苑(プロフ) - yukidarumakunさん» 労いのお言葉ありがとうございます。この後の二人については少し考えていることがあるので楽しみに待っていてください！続きを書いた時にはまたこちらでお知らせしますね。 (2020年6月4日 12時) (レス) id: 217cb95def (このIDを非表示/違反報告)
yukidarumakun(プロフ) - 完結お疲れ様でした。この後の2人も見たいですね。また、いつか続編読ませて頂ける日を楽しみたいしています。 (2020年5月31日 19時) (レス) id: b586aa50e6 (このIDを非表示/違反報告)
紫苑(プロフ) - めぐぽん(*´･∀･)さん» コメントありがとうございます。楽しみと言って頂けて嬉しいです。更新頑張りますね！ (2020年5月26日 23時) (レス) id: 217cb95def (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：紫苑
| 作成日時：2016年12月14日 22時
