◇27◇ ページ27
『ここから逃げ出そう。』
そう翔くんが言ったときには驚いた。
俺やカズが脱走することを考えたのならまだしも翔くんが言い出すなんて…
だって翔くんは仮にも研究所の職員で
やり方には納得してないもののこの研究の大切さは誰よりも理解してるはずで。
ましてや彼の父親を裏切る行為なんて…出来ない人だと思ってたから。
『大丈夫。Jとカズは必ず外に連れ出す。
二人がこんな狭い世界で一生を終えるなんて勿体無い。』
この頃には翔くんは俺とカズのことを名前で呼ぶようになってて
しかも俺らを安心させるように微笑みを浮かべさえした。
いつまでも黙ったまま言葉を返さない俺達を見て翔くんは少し眉を八の字にする。
『…俺だけなら不安か？
それなら大丈夫 サトシとマーも一緒だから。』
『ちがっ…！そうじゃなくって。
…良いの？』
『ああ。もう決めたことだから。』
はっきりそう言い放ってニコリと微笑んだ彼。
その決意をさせたのが他でもない俺だと言うことに…嬉しさと申し訳なさが同時に込み上げてきた。
『ゴメンね。』
『謝んなよ。
お前が悪い訳じゃない…むしろ悪いのは俺らなんだから。』
実際に俺らが脱走したのは戦争が終わった直後の寒い冬の日。
俺とカズと翔くんが施した処理で研究所の人達は誰も俺らのデータを検索できないようにして
俺らは新しい生活を始めた。
研究所から逃げ出すときに翔くんが持ち出してくれた俺らのデータから…俺ら全員の本当の名前が分かった。
意外だったのは…翔くんが研究所で働いていた時の名は俺らと同じように偽名だったこと。
そして彼自身がそれを自覚していたこと。
『俺の本当の名は櫻井翔なんだよ。』
どこか寂しそうに改めて彼はそう自己紹介してくれた。
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とも(プロフ) - こちらからもこんにちは。続きが…めちゃくちゃ気になります。楽しみに待ってます。 (2020年6月7日 14時) (
レス) id: bd0ebe94fc (このIDを非表示/違反報告)
美唯 - 作品見つけ楽しく読ませてもらってます(笑)台詞の前にメンバーだけでも名前あったら良いかな…って思ってしまいました。続き楽しみにしてますね (2016年1月4日 20時) (レス) id: 14862b15c0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：紫苑
| 作成日時：2016年1月1日 21時
