遥か彼方～第一歩～ [Jun] (ページ17)

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パレット [J side] ページ17

パレットと書かれたその短編小説を借りようとした時、目の端に踏み台に登る君を見つけた。

あれ…… 落ちるんじゃないか？

そう思ったら体が勝手に動いていた。

案の定バランスを崩して倒れ込んだ君を抱き留めた。

「あありがとうございます！」

「昔から危なっかしいんだよ……」

「え？」

俺の呟きは聞こえなかったらしい。
まぁその方が良いんだけどね。

「あの…… お怪我はありませんか？」

そう聞いてくる君に大丈夫だと頷きかけると、逆に問いかけた。

「そちらこそお怪我はありませんか？」

「だ大丈夫です……」

お互いにどこにも怪我は無いようで安心する。

忘れないうちに渡しておくか。
そんな思いと共にカバンの中からどら焼を取り出し、君に手渡した。

「これこの間ののど飴のお礼です。」

「え？あっ！ありがとうございます！」

最初は戸惑っていたが、笑顔を見せながら君は受け取ってくれた。

「私どら焼大好きなんです！」

知ってるよ。声には出さずに心の内で呟いた。

君の同僚がこちらに駆け寄ってくるのを見て、俺は踵を返して本棚の奥へ向かった。