い か り ページ9
「……もういい」
そう言う私に面倒くさそうにため息を吐くベックくん
そんなつもりはなかったけど思わず涙がこぼれた
拭っても拭っても出てくるそれに腹が立つ
「……っ」
驚いて声をかけてくるみんなを無視して荒々しく酒場を出た
どうしてこうなったのか。それは今から少し前のこと
今日は天気が悪いのもあってか頭が痛くてイライラしていた
いつもなら気にしないどんちゃん騒ぎのみんなにうるさい、と腹が立つほどに
だからだろうか、慣れているはずのベックくんの塩対応にも上手く答えられなくて、
「ね、ベックくん」
「なんだ」
「あのね、今日よかったら一緒に出かけない?」
「むりだ、そんなことで話しかけてくるな」
いつも通り。いつも通りの会話のはずなのに、どこか違って。
そっか、『話しかけてくんな』は言われたこと無かったっけ
ベックくんの言葉にシャンクスがベック、と声をかけると同時にはは、と乾いた笑いを漏らす
「そうだね、話しかけてごめんね、うざかったよね」
「おい、」
「ごめんね、もう話しかけない。私みたいなのに絡まれるの嫌だったよね、もっと可愛くて綺麗な人が」
よかったよね。そう言おうとした瞬間、壊れそうなくらいに机を叩く音が静かな酒場に響き渡った
「うるせえ、黙れ」
そう言い放つベックくんの目はいつもの何倍も冷たくて。
でも、怖さよりも怒りの方が勝った。
……ふざけんな
「なんで、なんで私がそんな風に言われなきゃいけないの?」
「は?」
「話しかけてくんなって言ったじゃん。いっつも私には冷たい態度とって、そのくせ毎日他の女の人と楽しそうに歩いて、なんなのほんと」
私とは何もかも正反対の綺麗な女の人。そんなの、当てつけじゃんか。
「ホノカ、」
「やめて。名前も呼んで欲しくない」
「……そうか、じゃあいい。」
お前、部屋戻れ。邪魔だ。
すーっと体のそこが冷えていく感覚がした
そして、冒頭に戻る
酒場を出た後、部屋に戻れ、なんて言うこと聞く訳もなく頭を冷やすために村を歩き回る。
気づけば、最近ルフィたちと行った場所にたどり着いて、そのままベンチに座った
やってしまった
激しい後悔と罪悪感に襲われ、ぼろぼろ涙が出る
嫌われたかな、
「……ッう、」
ぽつ、ぽつと降ってきた雨が私の心情を表している
ようで、柄にもなく声を上げて泣いた
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作者名:さくらんぼ | 作成日時:2022年9月12日 21時