い い も の ページ8
全くといっていいほどに眠れなかった。
毎日のように私を起こしに来るシャンクスにぎょっとした顔で心配されるくらいには酷い顔をしていたらしいがそれよりも、
昨日の今日でなにか変化があったかというと
何も無かった。
ほんとに何もなかったのだ。
朝、声が裏返るぐらいに緊張しながら声をかけると返ってきた言葉はたったの2文字
｢ああ｣
思わず肩を叩いた私は悪くない。
昨日の今日だよ？こんな対応変わらないどころが更に冷たくなってることある？
そして何食わぬ顔で昨日と違う女の人を連れ街へ歩いていくベックくんを見送った後、酒場へと行き机に突っ伏した
｢マキノちゃあん、私そんなに魅力ないかなー？？｣
｢ふふ、そんなことないわ。ホノカさんはとっても素敵よ｣
｢そんな褒めてくれるのマキノちゃんだけだよーー｣
マキノちゃんから貰った飲み物を飲みながら泣きつくと、困ったように笑った
｢ホノカさんが思ってるよりもみんなホノカさんのこと好きなのよ？｣
｢えー？そうかなあ……｣
｢ええ、ベックマンさんもきっと恥ずかしかっただけよ。少ししたらいつも通りになるわ｣
ベックくんが、恥ずかしい？？
ぽや〜とベックくんの恥ずかしがっている所を想像して、すぐ打ち消した。
｢ないないない、あの堅物の女好きだよ？｣
両手を大きく振って全否定しているとマキノちゃんがあら、と言うと同時に後ろから頭を掴まれた
｢誰が堅物女好きだ？ホノカ｣
ギギギ、と真っ青な顔で後ろを振り向くとにこにこ怖いくらいに笑顔のベックくんが後ろに立っていた
｢べ、ベックくん、お出かけは……？｣
｢終わった。それより、なんだ？もっかい言ってみろ｣
｢あ、いや、空耳じゃないー？？｣
｢しっかり聞こえてんだばか｣
｢あでっ｣
重めのげんこつをくらって頭を押さえていると、後ろからふふっと可愛らしい笑い声が
｢……マキノちゃん｣
｢うふふ、ごめんなさい。でも言う通りだったでしょ？｣
何を言っているのかわからず？を浮かべながらベックくんの方を向くと思わず目を見開いた。
ほんのりと耳が赤く染っている。
初めて見るベックくんの照れに思わず嬉しくなって飛びついた
｢ベックくんーーー！｣
｢離れろ｣
｢ベックくんも照れるんだね！！｣
｢照れてねえ｣
｢またまた〜｣
いいものを見た日だ。
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作者名：さくらんぼ | 作成日時：2022年9月12日 21時
