年下の男 26 (ページ48)

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偽善…YN ページ48

★★★

僕はチャンミンを背にくるりと向き直り、

彼女を真っ直ぐに見る。

「…偽善でも良いと思いますよ…？」

Aさんを縛った言葉。

偽善者。

僕はこの言葉には縛られない。

「……え」

目を見開く彼女。

「……例え気持ちに嘘があっても

その行動自体が相手にとって善ならば…、

…それが誰かのためになるなら、誰かの幸せに繋がるなら…

僕は偽善でも良いと思います」

僕の言葉に

彼女の瞳が揺らいだ。

後もう一つ、伝えておかなければいけない事。

「…それから…

今後僕とのことでAさんを間に挟むような事はやめてください。

もしAさんを巻き込むと言うなら…」

僕はどうなっても構わない。

だけどAさんは守らなくては。

「……その時は、僕も彼を巻き込みます」

覚悟を決めた心でそう伝えて、

くるりとチャンミンに振り向き

その背中に手を添えた。

「…出よう、チャンミン」

「…はい」

2人で部屋を後にしようとした時だった。

「……じゃあ…！

じゃあどうすれば良かったって言うの？！！
偽善でも良いって？！
その結果で、今の私は全然幸せじゃないんだけど？！」

背後から叫ぶ彼女の声に

もう一度だけ振り向き

必死に訴えかけてくる彼女を

真っ直ぐに見た。

「……それは…偽善でもなんでもない。

ただの嘘、だからですよ。

偽りで積み重ねてきただけだから…

貴女には何も残らないんです。

お腹の子のためにも
いい加減目を覚ましてください。

子供を守れるのは貴女しかいないんですよ？

その子にも嘘で固めた生活をさせるんですか？
それが本当に幸せだと思えるんですか？

少なくとも今の貴女が幸せではないのなら

もっと真剣にこれから先の生き方を考えるべきだと思います」

そう言って

頭を下げて部屋を後にした。

★★★