生きる…YN ページ34
☆☆☆
掴まれたと言っても全然力の入ったものじゃない。
俺を止めるために触れた程度の力だった。
だけど、
今までなんのリアクションのなかったAさんを考えればすごい進歩なわけで、
その微妙な動きさえ今は気になるから
直ぐに止まってAさんを見た。
「…大丈夫。
トイレにも行きたいから…自分で…行くよ」
そう言って立ち上がろうとする。
でも、さっきまで全力で泣いていたせいかうまく身体に力が入らなくなったようで
Aさんはその場からなかなか動けないでいた。
見かねた俺はAさんを横抱きにして抱き上げる。
「…えっ？！」
Aさんがまん丸な目をするから
「急がないと…！」
そう言ってそのままトイレへ向かった。
Aさんの頬に少し赤みを感じたから
俺はまた、嬉しくなった。
トイレのドアも開けて中へ立たせる。
「終わったら呼んでくださいね」
そう言ってトイレを後にする。
俺はキッチンに向かい、冷蔵庫からミネラルウォーターのペットボトルをとりだし、飲んだ。
Aさんとずっと一緒にいて、
俺も全く水分を取っていなかったことを思い出した。
「……はぁ……」
深呼吸をする。
思わず顔が綻ぶ。
良かった。
一つ前進だ。
ほっと一息ついていると
トイレのドアが開く音が聞こえたから、慌てて向かう。
トイレのドアに掴まりながらなんとかキッチンに向かって来ようとするAさん。
「呼んで、って言ったのに…！」
すぐさま後ろに回りこんで抱き上げる。
「だ、大丈夫だよ、ユノ…」
「僕が心配だから」
赤い顔で遠慮するAさんにピシャリと言い放つ。
リビングのソファにAさんを座らせて
さっき冷蔵庫から出した、ミネラルウォーターを差し出す。
Aさんは「ありがとう」と小さくつぶやいて水を飲んだ。
そして、一つ深呼吸をした。
「……どんなに辛くても………
……どんなに悲しくても……
喉は渇くし……
トイレにも行きたくなるんだね………」
そう言って、微かに笑った。
「……うん。
それが生きてる…ってことなんだね…」
俺がそう言うと
Aさんは静かに天を仰ぎ
「……私は………
………生きてるんだもんね……」
そう言って
静かに涙を流した。
☆☆☆
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ゆうの(プロフ) - satoさん» 自分の中だけで消化するには傷が深すぎました。誰かの存在を感じることで得られる安心感ってありますよね。一人じゃない、って。その相手も大切ではありますが。ここにユノがいたことに意味があるんですよね(*^^*) (2016年2月18日 8時) (
レス) id: b73f13763a (このIDを非表示/違反報告)
sato(プロフ) - 廉さんの事…ユノに話しながら、心の整理をしてるんだね。良かった。。前をむくことが出来て…。これからの二人楽しみです。 (2016年2月17日 23時) (レス) id: ace70fdc14 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうの(プロフ) - なおさん» コメントありがとうございます(*^^*) ユノにはジュリがいますけど、今回のことがユノに大きな影響を与えたのは確かです！ (2016年2月17日 20時) (レス) id: b73f13763a (このIDを非表示/違反報告)
なお(プロフ) - 良かった〜〜これからのユノとの関係の変化に期待しています。 (2016年2月17日 20時) (レス) id: 56d5d27416 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうの(プロフ) - satoさん» 人間、やはり一人だけじゃ限界がありますよね。応援してくれる人がいる限りは大丈夫だと、私は思ってます(*^^*) ここで少しずつユノも変化していきます！ (2016年2月16日 20時) (レス) id: b73f13763a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆうの
| 作成日時：2015年12月30日 18時
