り ページ5
Aside
坂田さんとセンラさんの会話を聞きながらす、と火照っていた顔が冷めるのを感じた。
夢の中のようなテンションが目覚めてだだ下がるような、現実に引き戻された。
センラさんの言う通り、ファン一人に対して特別扱いは言語道断なのだ。
それはアイドル業の宿命だから。
私が声をかけられたのも、本当はご法度なのに。
『………人目につかない所で、降ろして頂けませんか。歩きます』
さ「え？乗ってけばいいよ、まだ５km以上ある」
セ「別に気使うことないで。俺の言い方が悪かった」
『いえ、そういう訳ではありません。
少しでも浦島坂田船にとってマイナスになるリスクがあるならそのリスクを招くわけにはいきません」
常にリスクを考えるべきだと思って口にした。
足を引っ張るような真似は万が一でもしたくない。
『それから、坂田さん。髪飾りはやはり頂けません。会場に行けばTweetをチェックしているリスナーさんも多いです。近くで見られれば同じ物だと分かるかもしれませんから』
名残惜しいが躊躇なくシュシュを解いて座席に置いた。
『ライブ、席で応援してます。頑張ってください』
頭を下げ、顔を上げると二人は無表情だった。
口を開いたのはセンラさんだった。
セ「……うん。Aちゃんがそう言うんなら」
さ「……………」
『応援してます』
路地に入って止めた車から降り、ナビで確認した道筋を確かめているとセンラさんがドアを閉める前にポツリと言った。
セ「ーーーーーーただの一ファンを、関係者席入れたりせんよ」
ーーーーーーー近くで応援して欲しかったんやろうな。と続けられてあ、と躊躇う。
私はまた言葉を間違えたのだろうか。
リスクを招かぬようにとしたことが、二人の好意を無下にしたのかもしれない。
セ「ほんじゃ、な」
ゆっくり上がっていくガラスに隠されていく悲しげな顔は「もう会うことはない」と言っているようで。
坂田さんはずっと、不貞腐れたかのように反対を向いていた。
走りだした車の後に路地を出て通りを歩き出すと、急に一人の感覚が戻ってきた。
小さくなって見えなくなった車を見送りながら自分に言い聞かせた。
ーーーこれで良かったんだ。
ーーーこれで良かった筈だから。
ーーー駄目だな、私。言葉間違えてばっかりで相手の気持ちを無下にしてしまう。相手のことなんて考えられてないじゃないか。
いつもそうだ。
冷静になると言葉を間違える。
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丙 - ありがとうございます。頑張りますね！ (2019年6月17日 20時) (
レス) id: c1b6b5f4c6 (このIDを非表示/違反報告)
てろち - 夢主ちゃん羨ましいなぁ…更新頑張ってくださいΣd(ﾟ∀ﾟd) (2019年6月15日 23時) (レス) id: 999d763a4b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：丙 | 作成日時：2019年6月13日 20時
