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八十九、最後の夜 ページ44

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パーティもお開きになり、望はたくさん心配かけたから帰らないと、と“崇兄”の待つ家へ帰っていって、

この場所での最後の夜は、智と二人で過ごすことになった。




「なんか、ずーっと毎日のようにのんちゃんおったから、不思議な気分やね。」

「退院してからも望泊まったりしてたもんね。」

「ほんまのんちゃん心配性なんやから。」

「智といるの、きっと楽しいんだよ。」

「えー?俺?そうだとしたら厄介なのに懐かれてもうたわー。」




わざとらしく困った顔をして、笑う智。

そんなお茶目な表情が、いつもより子供じみていて、気を許してくれているようで嬉しかった。

寝る支度を整え、明日ここを出ていく準備に取り掛かる。

少しずつ部屋から無くなっていく自分の形跡。

あとは身につけているものと、明日の朝使うものだけとなって、ふと手を止めて部屋を見渡す。

出ていくのが、まだ信じられなかった。しばらくここで過ごして、ここにいるのが当たり前のようになっていた。

熱いものが込み上げて来そうで、思わずきゅっと唇を噛む。大丈夫、もう泣かない。




「A、準備大丈夫そう?」




そうしていると、お風呂から上がり寝る支度を整えた智がそう声をかけてくる。




「うん、大丈夫そう。」

「まあ、何かあってもそんな遠くないし、平気やけどな。」

「うん、そうだね。」

「ほなそろそろ寝る?」




智が私を寝室の方へ手招きする。

「うん」と頷いて、いつものように自分用の布団に潜り込もうとすると、

不意に掴まれた手首。




「A」




私の名前を呼ぶ智の方を見れば、彼は真っ直ぐ私を見ていた。





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いつき(プロフ) - サイド読んで胸がギュッとしました (2020年6月11日 16時) (レス) id: 8b7262866a (このIDを非表示/違反報告)
つづり(プロフ) - しらたまさん» ありがとうございます。ゆっくりにはなってしまいますが、面白いと思っていただけるよう頑張りますね。 (2019年2月17日 11時) (レス) id: 063d02935e (このIDを非表示/違反報告)
しらたま(プロフ) - これからの展開がとっても気になります、、 (2019年2月17日 0時) (レス) id: 04ec2ee818 (このIDを非表示/違反報告)
つづり(プロフ) - いつきさん» コメントありがとうございます。そんな風に言って頂けて嬉しいです。このお話は初めて書いたものですし、自分自身大事に思っているので、しばらく更新していなかったのですが、最後まで書くつもりでいます。近いうちに更新するので、良かったらお付き合い下さい。 (2018年11月20日 9時) (レス) id: 2b8a9cbc91 (このIDを非表示/違反報告)
いつき(プロフ) - すごい心に刺さるお話でもう少し早く出会っていたら完結まで見れたのかなと悲しく思っています。素敵なお話で続きが気になります。気が向いて書いてくれるのを楽しみにしてます。 (2018年11月20日 3時) (レス) id: 9589088492 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:つづり | 作成日時:2018年9月9日 23時

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