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八十四、血の味 ページ39

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ややあって、智が話し出す。




「のんちゃん、ずっと帰らんかってん。」




智は困ったような顔で笑う。

けれどその優しい笑顔が余計に胸を苦しくするようで。




「俺のせいやからって、俺がもっと早く気づいてたらって、

のんちゃん…Aが起きへん間、ここを離れへんかったんやで。

でもずっと病室におる訳にもいかへんし、ほかの部屋貸してもらったんやけど、眠れへんみたいで結局この部屋の前に戻ってきてしもて。

やっと今朝、一回家に帰ったところやってん。」




「困った子やろ。」って、智は優しく笑う。

私が自分で選んだことなのに、望はそれを自分のせいだと言う。

自分の選択で、望が苦しんでいた。

わかっていた、つもりだった。

智も望も、私がいなくなればきっと悲しむということくらい。

大切にされていた。そんなことはずっとわかっていた。

けれどそれ以上に、私はわかっていなかった。

自分を大切にしてくれていた人の心を裏切ってしまうことが、どういうことなのかを。

きゅっと下唇の端を噛む。

ほんのり血の味がして、口に広がった。




「智、私…望と話したい。」




そう言えば智が優しく微笑んで、「おん、ほなら、少し待っててな。」と、そう残して智は部屋を出ていった。





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いつき(プロフ) - サイド読んで胸がギュッとしました (2020年6月11日 16時) (レス) id: 8b7262866a (このIDを非表示/違反報告)
つづり(プロフ) - しらたまさん» ありがとうございます。ゆっくりにはなってしまいますが、面白いと思っていただけるよう頑張りますね。 (2019年2月17日 11時) (レス) id: 063d02935e (このIDを非表示/違反報告)
しらたま(プロフ) - これからの展開がとっても気になります、、 (2019年2月17日 0時) (レス) id: 04ec2ee818 (このIDを非表示/違反報告)
つづり(プロフ) - いつきさん» コメントありがとうございます。そんな風に言って頂けて嬉しいです。このお話は初めて書いたものですし、自分自身大事に思っているので、しばらく更新していなかったのですが、最後まで書くつもりでいます。近いうちに更新するので、良かったらお付き合い下さい。 (2018年11月20日 9時) (レス) id: 2b8a9cbc91 (このIDを非表示/違反報告)
いつき(プロフ) - すごい心に刺さるお話でもう少し早く出会っていたら完結まで見れたのかなと悲しく思っています。素敵なお話で続きが気になります。気が向いて書いてくれるのを楽しみにしてます。 (2018年11月20日 3時) (レス) id: 9589088492 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:つづり | 作成日時:2018年9月9日 23時

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