八十、残酷な答え ページ35
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「私…夢を見てた。」
「…聞いてもええ？」
こくり、私は智を見て頷く。
あの後、病室に駆けつけた医者の先生に軽く質問や検査をされ、問題ないだろうと告げられた。
けれどあれから3日程眠っていたようで、身体もまだ上手く動かない為、大事をとってもう一日病院に泊まることになった。
そうして先生は軽いお説教を私にした後部屋を出ていき、病室にはまた智と私の二人だけが残った。
智は私の手を握ったまま、静かに言葉を待っている。
「私、智の家にいる間、ずっとお母さんの…本当のお母さんの夢を見てた。
私はね、智。ずっと一緒に行きたかった。
お母さんと一緒に…。」
一緒にの意味を察した智は、その言葉を苦しそうな顔で聞いている。
唇を固く結んで、私の手を握る智の手の力が少し強かった。
「今のお義母さんとお義父さんは、元々は優しい人達だった。
けど、お義父さんの仕事が…あまり上手くいかなくなって、
きっと、それも私のせい。私の本当のお母さんがしてしまった事のせいで。
けど私を引き取ったからって、ちゃんとしないとって、きっと無理してたんだと思う。
だんだん二人は喧嘩するようになって、それでも私がいたから離れられなくて、
私が…二人を不幸にしたんだって、そう思った。
私がいなければ、二人はこんなにならなかったかもしれないって。」
「…そんなこと」
智の声は、掠れていた。
そのせいか、怒っているようにも、苦しんでいるようにも聞こえる。
私は首を振る。そんなことないなんてことは、ないのだと。
「智も、望もだんだんと辛そうな顔になっていくのが、私には辛かった。
そうさせてるのは私なのに、どんどん深く堕ちていくの。
いっそあの時一緒に連れて行ってくれればって、そう思った。
だから、もう終わりにしようと思った。」
「…Aは、目を…覚ましたくは、なかったん？」
智はきっと、この答えを聞くのが怖いのだと思う。
祈るような顔で、まるでそんなことないだろうとでも言うように、言葉は上手く繋がらない。
首を横に振って欲しいと、違うと否定して欲しいのだと、彼の一つ一つからそう感じた。
けれど、私は残酷な答えを選ぶ。
私は首を縦にゆっくりと動かし、それを見た智は、悲しそうに息を吐く。
それでも全て本当の事だった。
「私はもう、目を覚ましたくなかったよ。」
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いつき(プロフ) - サイド読んで胸がギュッとしました (2020年6月11日 16時) (
レス) id: 8b7262866a (このIDを非表示/違反報告)
つづり(プロフ) - しらたまさん» ありがとうございます。ゆっくりにはなってしまいますが、面白いと思っていただけるよう頑張りますね。 (2019年2月17日 11時) (レス) id: 063d02935e (このIDを非表示/違反報告)
しらたま(プロフ) - これからの展開がとっても気になります、、 (2019年2月17日 0時) (レス) id: 04ec2ee818 (このIDを非表示/違反報告)
つづり(プロフ) - いつきさん» コメントありがとうございます。そんな風に言って頂けて嬉しいです。このお話は初めて書いたものですし、自分自身大事に思っているので、しばらく更新していなかったのですが、最後まで書くつもりでいます。近いうちに更新するので、良かったらお付き合い下さい。 (2018年11月20日 9時) (レス) id: 2b8a9cbc91 (このIDを非表示/違反報告)
いつき(プロフ) - すごい心に刺さるお話でもう少し早く出会っていたら完結まで見れたのかなと悲しく思っています。素敵なお話で続きが気になります。気が向いて書いてくれるのを楽しみにしてます。 (2018年11月20日 3時) (レス) id: 9589088492 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：つづり | 作成日時：2018年9月9日 23時
