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七十九、おかえり ページ34

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重たい瞼を上げれば、真っ白な天井が見えた。

身体は鉛のように重い。頭も、腕も、全部が自分の身体ではないようで。

すぐ横にある窓のカーテンの隙間から、オレンジ色の光が漏れている。

帰って、来たのだろうか。

妙にリアルな夢を見てきたからか、夢なのか、現実なのかの区別がまだつかない。

身体を起こしてみようとするが、上手く力が入らず、結局また戻ってしまう。

そう何度か繰り返していると、近くで床に物がぶつかるような音がした。




「A…」




私がそちらを見るよりも早く、声がした。

その声に跳ねる私の心臓。

振り向きたいのに、振り向けない。

足音がゆっくりとこちらに近づいてくる。




「…A…?」




その声は、夢の中で何度も聞こえた声だった。

何度も私の名前を呼んで、まだダメだよと、私を引き戻してくれた声。

大切で、愛おしくて、苦しくて、また会いたくて。

帰ってきたのだ。

そう、実感する。




「なあ…こっちむいてや」




声が、震えていた。

怒っているのか、泣いているのか、

恐る恐る彼の顔を見れば、また心が苦しくなる。




「A…」




確かめるようにそう私の名前を呼ぶ彼の瞳には、涙が光っていて、

戸惑うように私の頬に触れれば、そのまま私を抱き寄せた。




「…お…かえり…、A」




__絶対いなくなったらあかん




夢の中の大切な人と、目の前の大切な人。

同じじゃない、きっと。

けれど、それでも重ねるように、約束を破ってしまいそうになったことを後悔して、

私を抱きしめた彼の肩に涙がぽつりぽつりと落ちていく。




「智…ごめんなさい、ごめんなさい…」




そう大切な彼に掠れた声で告げれば、智は私を強く抱きしめながら、もう一度優しい声で「おかえり」と零した。




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八十、残酷な答え→←七十八、彼との約束



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いつき(プロフ) - サイド読んで胸がギュッとしました (2020年6月11日 16時) (レス) id: 8b7262866a (このIDを非表示/違反報告)
つづり(プロフ) - しらたまさん» ありがとうございます。ゆっくりにはなってしまいますが、面白いと思っていただけるよう頑張りますね。 (2019年2月17日 11時) (レス) id: 063d02935e (このIDを非表示/違反報告)
しらたま(プロフ) - これからの展開がとっても気になります、、 (2019年2月17日 0時) (レス) id: 04ec2ee818 (このIDを非表示/違反報告)
つづり(プロフ) - いつきさん» コメントありがとうございます。そんな風に言って頂けて嬉しいです。このお話は初めて書いたものですし、自分自身大事に思っているので、しばらく更新していなかったのですが、最後まで書くつもりでいます。近いうちに更新するので、良かったらお付き合い下さい。 (2018年11月20日 9時) (レス) id: 2b8a9cbc91 (このIDを非表示/違反報告)
いつき(プロフ) - すごい心に刺さるお話でもう少し早く出会っていたら完結まで見れたのかなと悲しく思っています。素敵なお話で続きが気になります。気が向いて書いてくれるのを楽しみにしてます。 (2018年11月20日 3時) (レス) id: 9589088492 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:つづり | 作成日時:2018年9月9日 23時

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