七十五、零れ落ちていく ページ30
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Aが落ち着くくらいの時間を開けて家に戻ると、俺は妙な違和感を感じた。
明かりは着いているのに、部屋にはAものんちゃんもいる気配がなくて、
変わりにバスルームの方から聞こえてくるシャワーの音。
シャワー浴びてるのかと一瞬納得しかけたけれど、拭えない違和感。
それならのんちゃんは部屋にいるはずで。
そういえば何となくシャワーの音がやけに大きく聞こえるような。
そして、なによりもシャワーの音が変わらない。
普通はシャワーを動かしたり、自分が動けば多少音が変化するはずなのに、それが全くない。
ただ一定に同じように流れ続けるその音に、だんだんと血の気が引いていく。
まさか、と思った瞬間にはもう急いでバスルームに向かっていた。
_気の所為であって欲しい。
笑ってくれなくてもいいから、こっちを向いて、少しほっとした顔をして
頭を撫でてあげると、少しだけ安心した顔をする彼女
ただ、いてくれるだけで、それでいいから、
どうか、お願いします。
思い違いであってくれ。
バスルームが見えて、開けっぱなしの扉から勢いよく中に入る。
…ああ、
最悪の予想が、当たってしまった。
出しっぱなしのシャワーの中で、ゆっくり顔をあげるのんちゃんの腕に抱かれたA。
のんちゃんの頬には、涙なのか、水なのかわからないけれど雫が流れ落ちている。
その彼の腕にぐったりと身体を預けるAの左腕は真っ赤で、
咄嗟に何か叫んだんだと思うけれど、何を言ったのか覚えていない。
変わりに耳に残ったのんちゃんの声。
「智さん…」
神様はなんて、残酷なんやろうな。
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いつき(プロフ) - サイド読んで胸がギュッとしました (2020年6月11日 16時) (レス) id: 8b7262866a (このIDを非表示/違反報告)
つづり(プロフ) - しらたまさん» ありがとうございます。ゆっくりにはなってしまいますが、面白いと思っていただけるよう頑張りますね。 (2019年2月17日 11時) (レス) id: 063d02935e (このIDを非表示/違反報告)
しらたま(プロフ) - これからの展開がとっても気になります、、 (2019年2月17日 0時) (レス) id: 04ec2ee818 (このIDを非表示/違反報告)
つづり(プロフ) - いつきさん» コメントありがとうございます。そんな風に言って頂けて嬉しいです。このお話は初めて書いたものですし、自分自身大事に思っているので、しばらく更新していなかったのですが、最後まで書くつもりでいます。近いうちに更新するので、良かったらお付き合い下さい。 (2018年11月20日 9時) (レス) id: 2b8a9cbc91 (このIDを非表示/違反報告)
いつき(プロフ) - すごい心に刺さるお話でもう少し早く出会っていたら完結まで見れたのかなと悲しく思っています。素敵なお話で続きが気になります。気が向いて書いてくれるのを楽しみにしてます。 (2018年11月20日 3時) (レス) id: 9589088492 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:つづり | 作成日時:2018年9月9日 23時