検索窓
今日:14 hit、昨日:3 hit、合計:15,986 hit

七十二、永遠の出口 ページ27

.





そこからはあまり覚えていなくて、気が付いたら病院のベッドに寝かされていた。

視界が、赤かった。

頭にこびりついたあの日の“赤”が、世界を覆っていた。

自分が「ごめんなさい」と呟いているんだと気づいても、耳鳴りが止まらなくて音は他に何も聞こえなくて。

智が手を握ってくれているのに、触れてる部分が温かいのに、それすら鳥肌が立って恐ろしかった。

そんな時間が永遠のように感じて、苦しくて、怖くて、どれだけ時が流れたかわからないけれど落ち着いてきた頃に、やっと智の声が僅かに聞こえて。

彼の声は名前を呼んでいた。

ひたすら私の名前を、優しい声で。

それに返そうと「智」と言おうとしても声が出なくて、けれど智は口の動きでわかってくれたようで。

「うん、ここにおるから」と苦しそうな顔で彼が笑っていた。



.




いつの間にか眠っていたようで、目を開けると視界を覆っていた“赤”は無くなっていた。

ふと手に温もりを感じて、横を向くと智が私の手を握ったままで突っ伏して眠っていた。

身体を起こすと智が「ん…」と目を覚まして、目が合うと直ぐに抱きしめられて。




「お母さん、大丈夫やって。よかった。よかったな。」




そう智の言葉を耳元で聞いたら、溢れるように涙が流れて、止まらなかった。





.

七十三、歪み→←七十一、過ぎゆくもの



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (47 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
147人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

いつき(プロフ) - サイド読んで胸がギュッとしました (2020年6月11日 16時) (レス) id: 8b7262866a (このIDを非表示/違反報告)
つづり(プロフ) - しらたまさん» ありがとうございます。ゆっくりにはなってしまいますが、面白いと思っていただけるよう頑張りますね。 (2019年2月17日 11時) (レス) id: 063d02935e (このIDを非表示/違反報告)
しらたま(プロフ) - これからの展開がとっても気になります、、 (2019年2月17日 0時) (レス) id: 04ec2ee818 (このIDを非表示/違反報告)
つづり(プロフ) - いつきさん» コメントありがとうございます。そんな風に言って頂けて嬉しいです。このお話は初めて書いたものですし、自分自身大事に思っているので、しばらく更新していなかったのですが、最後まで書くつもりでいます。近いうちに更新するので、良かったらお付き合い下さい。 (2018年11月20日 9時) (レス) id: 2b8a9cbc91 (このIDを非表示/違反報告)
いつき(プロフ) - すごい心に刺さるお話でもう少し早く出会っていたら完結まで見れたのかなと悲しく思っています。素敵なお話で続きが気になります。気が向いて書いてくれるのを楽しみにしてます。 (2018年11月20日 3時) (レス) id: 9589088492 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:つづり | 作成日時:2018年9月9日 23時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。