七十二、永遠の出口 ページ27
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そこからはあまり覚えていなくて、気が付いたら病院のベッドに寝かされていた。
視界が、赤かった。
頭にこびりついたあの日の“赤”が、世界を覆っていた。
自分が「ごめんなさい」と呟いているんだと気づいても、耳鳴りが止まらなくて音は他に何も聞こえなくて。
智が手を握ってくれているのに、触れてる部分が温かいのに、それすら鳥肌が立って恐ろしかった。
そんな時間が永遠のように感じて、苦しくて、怖くて、どれだけ時が流れたかわからないけれど落ち着いてきた頃に、やっと智の声が僅かに聞こえて。
彼の声は名前を呼んでいた。
ひたすら私の名前を、優しい声で。
それに返そうと「智」と言おうとしても声が出なくて、けれど智は口の動きでわかってくれたようで。
「うん、ここにおるから」と苦しそうな顔で彼が笑っていた。
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いつの間にか眠っていたようで、目を開けると視界を覆っていた“赤”は無くなっていた。
ふと手に温もりを感じて、横を向くと智が私の手を握ったままで突っ伏して眠っていた。
身体を起こすと智が「ん…」と目を覚まして、目が合うと直ぐに抱きしめられて。
「お母さん、大丈夫やって。よかった。よかったな。」
そう智の言葉を耳元で聞いたら、溢れるように涙が流れて、止まらなかった。
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いつき(プロフ) - サイド読んで胸がギュッとしました (2020年6月11日 16時) (レス) id: 8b7262866a (このIDを非表示/違反報告)
つづり(プロフ) - しらたまさん» ありがとうございます。ゆっくりにはなってしまいますが、面白いと思っていただけるよう頑張りますね。 (2019年2月17日 11時) (レス) id: 063d02935e (このIDを非表示/違反報告)
しらたま(プロフ) - これからの展開がとっても気になります、、 (2019年2月17日 0時) (レス) id: 04ec2ee818 (このIDを非表示/違反報告)
つづり(プロフ) - いつきさん» コメントありがとうございます。そんな風に言って頂けて嬉しいです。このお話は初めて書いたものですし、自分自身大事に思っているので、しばらく更新していなかったのですが、最後まで書くつもりでいます。近いうちに更新するので、良かったらお付き合い下さい。 (2018年11月20日 9時) (レス) id: 2b8a9cbc91 (このIDを非表示/違反報告)
いつき(プロフ) - すごい心に刺さるお話でもう少し早く出会っていたら完結まで見れたのかなと悲しく思っています。素敵なお話で続きが気になります。気が向いて書いてくれるのを楽しみにしてます。 (2018年11月20日 3時) (レス) id: 9589088492 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:つづり | 作成日時:2018年9月9日 23時