六十九、一日の終わり ページ24
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「…A、起きとる?」
智が部屋を出てからしばらく経って、もう望の寝息が聞こえてきても良さそうな頃。
寝息の代わりに望の掠れ声が聞こえた。
先程までのふざけた調子では無い声に、小さく跳ねる心臓。
「起きてるけど…」
「…A、いつまで智さんと暮らすん?」
もぞもぞと布団の中で向きを望の方に変えても、真っ暗にされた部屋では望の表情はわからない。
心配してくれているのだと何となく感じるけれど、望の言葉にこの時間がずっと続くわけではないことを改めて実感して、それに胸の奥がズキンと僅かに痛んだ。
「まだ、わからない…」
「A、智さんのこと好きやろ」
「…へ?」
唐突すぎる話の流れに思った以上に大きい声が出てしまって、望に「しー!」っと小声で言われてしまう。
「ごめん…」とボリュームを最小限にして謝ると、「智さんに誤解されるやろ」と少し怒ったような望。
「好きって…」
「A、自分では気付かへんと思うけど、俺と話す時と智さんと話す時、全然違う顔しとるで。」
「それはだって、智と望じゃ違うし…」
「何がやねん。」
「んー、年齢とか、性格とか…?」
「ふーん?」
腑に落ちないといったような声を出す望に「何…」と言うと、素っ気なく「別に」と返ってくる。
「そういえば望はなんで今日来たの?」
「楽しそうやったから」
「ふふ…望と智、なんだか兄弟みたいだった」
「なんやそれ…もう寝る。」
「あ、うん。」
望は「おやすみ」と一言言って、それからは本当に寝に入ってしまったようで、再び戻ってきた静寂が先程よりもさらに静かに感じる。
なんだか望のペースに今日一日のまれていたようで、色んなことを思い出して笑えてきて、ふと思い出す望の言葉。
「楽しそうやったから」
うん、そうだね。楽しかった。
望といると智もいつもよりたくさん笑ってる気がして、それがなんだか私まで嬉しくて。
「ありがとう」と心の中で、そう望に呟いて私も目を閉じて今日に別れを告げた。
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いつき(プロフ) - サイド読んで胸がギュッとしました (2020年6月11日 16時) (レス) id: 8b7262866a (このIDを非表示/違反報告)
つづり(プロフ) - しらたまさん» ありがとうございます。ゆっくりにはなってしまいますが、面白いと思っていただけるよう頑張りますね。 (2019年2月17日 11時) (レス) id: 063d02935e (このIDを非表示/違反報告)
しらたま(プロフ) - これからの展開がとっても気になります、、 (2019年2月17日 0時) (レス) id: 04ec2ee818 (このIDを非表示/違反報告)
つづり(プロフ) - いつきさん» コメントありがとうございます。そんな風に言って頂けて嬉しいです。このお話は初めて書いたものですし、自分自身大事に思っているので、しばらく更新していなかったのですが、最後まで書くつもりでいます。近いうちに更新するので、良かったらお付き合い下さい。 (2018年11月20日 9時) (レス) id: 2b8a9cbc91 (このIDを非表示/違反報告)
いつき(プロフ) - すごい心に刺さるお話でもう少し早く出会っていたら完結まで見れたのかなと悲しく思っています。素敵なお話で続きが気になります。気が向いて書いてくれるのを楽しみにしてます。 (2018年11月20日 3時) (レス) id: 9589088492 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:つづり | 作成日時:2018年9月9日 23時