六十五、困った来客 ページ20
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「望、なんでついてくるの…」
「ええやん、智さんなら許してくれそうやし。」
智の家から通う学校は新鮮で、いつもなら帰りたくなくて寄り道して帰る放課後を、今日は真っ直ぐ帰ろうと思いながら下駄箱から靴を取り出していた時だった。
望が片方の口角を上げて何か企んでいる時のいたずらっ子のような顔で、「俺も智さん家行く！」と言ってついてきた。
迷惑かかるからと拒否しているのに「いやや！」と頑なな望。
朝、学校で会った時にはいつもの懐っこい笑顔は完全に消え、眉間にくっきりした眉毛をきゅっと寄せながら心配してくれていたのに、
ワクワクした顔で半歩後ろをくっついてくる今の望は散歩中の犬そのものだ。
…犬、といっても身長が180cm以上ある彼は間違えなく、可愛らしい小型犬でなく尻尾をダイナミックに振る大型犬だろうけれど。
智に19時くらいには帰るから部屋でゆっくりしててと言われていたけれど、流石に望を勝手に上げる訳にもいかないから、
朝「はい」と智に渡された鮮やかな緑色のリボンがついた合鍵は、今日はポケットの中で温めておいて、公園で智の帰りを待つことにした。
「お前、俺のこともう好きになったんか。」
そう言いながら嬉しそうにクロと戯れる望。
控えめにすんすんと望の差し出した手の匂いを嗅ぐクロを見て、タレ目な望の目がさらにとろんと落ちそうな程に下がる。
「望、崇裕さんは平気なの？」
「おん、言ってある。崇兄も今日は抜けられへん飲み会があるって言うてたから。」
「そういう時、いつもはどうしてるの？」
「適当に作るかバイトで賄い恵んでもらっとる。」
望は転校してきてからすぐに、近くの自営業の定食屋のような所でバイトを始めたらしい。
働いてるところを実際に見たことは無いけれど、聞いている限りではだいぶ可愛がってもらっているようだ。
「A？」
構ってちゃんな望がじっとして待っていられるはずもなく、公園の茂みにひっかかっていたおもちゃの野球ボールを見つけて二人でキャッチボールをしていた時だった。
初めて会った時から変わらない、可愛い顔とは不釣り合いなカチッとしたビジネススーツ姿の智が、不思議そうに私の名前を呼んだ。
「…と、のんちゃん？」
「智さん、お邪魔しやす！」
智を見てきりっと眉を上げて敬礼する望。
智はそれだけで状況を把握したようで、「もー、帰るで。」と困ったように、けれど少し楽しそうに笑っていた。
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いつき(プロフ) - サイド読んで胸がギュッとしました (2020年6月11日 16時) (
レス) id: 8b7262866a (このIDを非表示/違反報告)
つづり(プロフ) - しらたまさん» ありがとうございます。ゆっくりにはなってしまいますが、面白いと思っていただけるよう頑張りますね。 (2019年2月17日 11時) (レス) id: 063d02935e (このIDを非表示/違反報告)
しらたま(プロフ) - これからの展開がとっても気になります、、 (2019年2月17日 0時) (レス) id: 04ec2ee818 (このIDを非表示/違反報告)
つづり(プロフ) - いつきさん» コメントありがとうございます。そんな風に言って頂けて嬉しいです。このお話は初めて書いたものですし、自分自身大事に思っているので、しばらく更新していなかったのですが、最後まで書くつもりでいます。近いうちに更新するので、良かったらお付き合い下さい。 (2018年11月20日 9時) (レス) id: 2b8a9cbc91 (このIDを非表示/違反報告)
いつき(プロフ) - すごい心に刺さるお話でもう少し早く出会っていたら完結まで見れたのかなと悲しく思っています。素敵なお話で続きが気になります。気が向いて書いてくれるのを楽しみにしてます。 (2018年11月20日 3時) (レス) id: 9589088492 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：つづり | 作成日時：2018年9月9日 23時
