五十八、家 ページ13
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目が覚めると、いつもの天井が見えた。
横にはベッドに突っ伏して眠るお母さん。
腕の隙間から見える頬には涙の跡がくっきりと残っている。
「いっ…」
起きようと思って身体を動かすと、全身痛いところだらけで思わず顔をしかめる。
_ああ、そうだ。
あの雨の日から数日、父は昨日酷く暴れたのだった。
今まで以上に手がつけられなくて、途中で痛みで意識を失ってしまったんだ。
お母さんはきっと、私をここまで運んでくれたのだ。
自分も痛いはずなのに。
浮かぶ既視感、温もりと冷たさの記憶。
_また、あの夜が来るかもしれない。
もう、ダメなのかもしれない。
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幸いにも今日は土曜日で、学校がなかった。
_こんな身体で学校に行ったら望にびっくりされちゃうな。
シャワーを浴びると色んなところが滲みて痛くて、けれど痛すぎて途中でもうわからなくなった。
長袖の薄いハイネックのセーターに、パンツなら全部傷は隠れた。
シャワーから上がると、お母さんはいなくなっていた。
父の姿もどこにもない。
リビングも、廊下も、そこら中がぐちゃぐちゃだった。
公園…行こう。
私はもう家と呼べるのかもわからないこの場所をあとにした。
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いつき(プロフ) - サイド読んで胸がギュッとしました (2020年6月11日 16時) (レス) id: 8b7262866a (このIDを非表示/違反報告)
つづり(プロフ) - しらたまさん» ありがとうございます。ゆっくりにはなってしまいますが、面白いと思っていただけるよう頑張りますね。 (2019年2月17日 11時) (レス) id: 063d02935e (このIDを非表示/違反報告)
しらたま(プロフ) - これからの展開がとっても気になります、、 (2019年2月17日 0時) (レス) id: 04ec2ee818 (このIDを非表示/違反報告)
つづり(プロフ) - いつきさん» コメントありがとうございます。そんな風に言って頂けて嬉しいです。このお話は初めて書いたものですし、自分自身大事に思っているので、しばらく更新していなかったのですが、最後まで書くつもりでいます。近いうちに更新するので、良かったらお付き合い下さい。 (2018年11月20日 9時) (レス) id: 2b8a9cbc91 (このIDを非表示/違反報告)
いつき(プロフ) - すごい心に刺さるお話でもう少し早く出会っていたら完結まで見れたのかなと悲しく思っています。素敵なお話で続きが気になります。気が向いて書いてくれるのを楽しみにしてます。 (2018年11月20日 3時) (レス) id: 9589088492 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:つづり | 作成日時:2018年9月9日 23時