四十七、遭遇 ページ2
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智とベンチで話していると、不意に公園の入口の方から聞き慣れた声が聞こえた。
「A…?」
スヤスヤと寝ていたクロは聞きなれない声にびっくりして茂みに隠れてしまう。
振り返った先に佇んでいたのは、望だった。
「望…なんでここに…?」
「散歩しててん。Aこそ。…隣の人は…誰?」
警戒したように望は眉をひそめて智のことを見ている。
その一方で智は、驚いたように目を見開いていた。
「あ…えっと…。」
改めて考えてみると智のことをどう説明していいのか出てこない。
けれど、望に智のことを怪しい人だと思って欲しくなくて、必死に頭を回転させる。
「いつも、お世話になってる人なの。」
「ほんまに?」
「ほんとに!」
望はまだ納得しきれていない様子で、私と智を交互に見ている。
しばらく硬直したように動かなかった智が、そこでようやく口を開いた。
「A…の友達?」
「うん。望って言うの。」
「…そっか。今日はもう、帰り?」
「え…でも…」
「な?」
智はニコッと笑い、私の手を引いてベンチから立ち上がらせる。
望はまだ険しい顔をして智を見ている。
それを見て、確かに今日は帰った方が良さそうだと思い、「わかった。」と俯きながら頷いた。
「のんちゃん!」
突然智が望にそう呼びかけると、望は拍子抜けしたような顔をする。
「誰がのんちゃんや!」
「Aのこと、家までちゃんと送ってやってな。」
「…言われんでもそうするわ。」
「ほなA、またな。気をつけてな。」
そう言うと、智は私の背中を優しくおして帰るように促し、手をひらっとさせて行ってしまった。
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いつき(プロフ) - サイド読んで胸がギュッとしました (2020年6月11日 16時) (レス) id: 8b7262866a (このIDを非表示/違反報告)
つづり(プロフ) - しらたまさん» ありがとうございます。ゆっくりにはなってしまいますが、面白いと思っていただけるよう頑張りますね。 (2019年2月17日 11時) (レス) id: 063d02935e (このIDを非表示/違反報告)
しらたま(プロフ) - これからの展開がとっても気になります、、 (2019年2月17日 0時) (レス) id: 04ec2ee818 (このIDを非表示/違反報告)
つづり(プロフ) - いつきさん» コメントありがとうございます。そんな風に言って頂けて嬉しいです。このお話は初めて書いたものですし、自分自身大事に思っているので、しばらく更新していなかったのですが、最後まで書くつもりでいます。近いうちに更新するので、良かったらお付き合い下さい。 (2018年11月20日 9時) (レス) id: 2b8a9cbc91 (このIDを非表示/違反報告)
いつき(プロフ) - すごい心に刺さるお話でもう少し早く出会っていたら完結まで見れたのかなと悲しく思っています。素敵なお話で続きが気になります。気が向いて書いてくれるのを楽しみにしてます。 (2018年11月20日 3時) (レス) id: 9589088492 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:つづり | 作成日時:2018年9月9日 23時