四十四、彼のこと ページ45
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「A、今日はなんか嬉しそうやね。」
夜、いつものように公園で智と過ごしていると、彼が柔らかく笑ってそう言った。
「そうかな。」
「おん、なんとなくやけど。」
「ふふ・・・智はなんでもわかるんだね。・・・うん、学校でいいことがあった。」
「そっか。よかったやん。」
智はそう言うと、自分の事のように嬉しそうにしていた。
智は、人の感情に敏感だ。
自分のこと以上に、きっと周りの人のことを見ている。
「智は?」
「へ?」
「今日はどうだった?」
そんな智に、聞いてみたくなった。
もう少し、彼のことを知りたいと思ったから。
彼は普段どうしているのだろう。
何を感じているのだろう。
楽しいのか、辛いのか。
私にはまだ彼の感情がわからないから、せめて言葉で知りたいと思った。
「んー、今日は少し疲れた・・・かな。」
「そっか。お疲れ様だね。」
「やけど・・・」
「ん?」
智が私の目を優しい目でじっと見ている。
どくんと、心臓が跳ねる。
恥ずかしくて顔を背けたいのに、彼から目を逸らしたくない。
そんな感情が頬を熱くする。
「・・・智?」
「Aに会って、疲れふっとんだ。」
そう言うと、くしゃっと智が笑った。
その笑顔を見て、まるで心臓をきゅっと握られているかのように苦しくなる。
握られたところから、感情が零れだしそうで、好きが溢れてしまいそうで、
見つめ返すことだけで、精一杯だった。
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つづり(プロフ) - Moco.さん» コメントありがとうございます。初めていただいたコメントということもあり、とても嬉しかったです。ご期待に添える展開になるかはわかりませんが、精一杯頑張ります。元気をいただきました。ありがとうございます! (2018年6月7日 1時) (レス) id: 2b8a9cbc91 (このIDを非表示/違反報告)
Moco.(プロフ) - お話の世界に引き込まれて30頁一気に読んでしまいました。今後の展開がとても楽しみです!応援しています! (2018年6月6日 11時) (レス) id: a529d7a9bc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:つづり | 作成日時:2018年3月21日 3時