四、出会い2 ページ5
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何も言わずに怪訝な顔をしていると、その男は慌てて話し始めた。
「あぁっ!ごめんなっ。驚かしてしまったやろか。不審者とかじゃないねんで?ただ、若い女の子がこんな遅くにこんなとこにいたら、あぶないな思って。・・・何してるん?」
一瞬、逃げようか迷ったが、捨てられた子犬のように下がった眉毛の彼を見て、なんだか不憫に思い、彼から猫が見えるよう、私は位置を変えた。
男はホッとしたようにしゃがみこみ、猫と私を交互に見ながらゆっくりと話し始めた。
「猫に・・・餌をあげてたん?君の猫ではないんかな?」
首を横に振ると、なるほどと彼は少し頷き、再び猫の方に視線を移す。
猫を眺める彼の顔は優しく、鼻筋の通った横顔は綺麗で、少しの間見とれていた。
「・・・優しいんやな。でも、やっぱり危ないし、お家の人も心配すると思うで?はよ帰り?」
私の方を真っ直ぐみて、彼は少し微笑んで言う。
さっき初めて会ったはずなのに、彼は私を本気で心配しているようだった。
そんな姿に少し緊張がほどけ、私も小さく話し始めた。
「・・・この子、昨日からここにいて、でも、私の家じゃ飼えなくて、置いていくにも心配なんです。」
「やっとしゃべってくれた。」
思わず彼の方を見ると、安心したように、目を少し伏せて笑っていた。
子猫は食べ終わったのか、ごろごろと喉を鳴らして私の前で毛繕いを始めた。
「んー。俺も飼えへんからな。でも昼間は犬とかカラスとかあぶないしなあ・・・。明日周りに当たってみるから、今日1日大丈夫やったし、明日までどうにかもたへんかなあ?」
どう?と言いながら彼は子猫を撫でる。
正直なところ、心配ではあったが、ここにいてもどうにもならないのもわかっていた。
「明日もまた様子見に来そうやね。ホンマは危ないから止めたいけど、俺も明日結果伝えにまた来るな?今日はもうほんとに帰らなアカンよ?な?」
そう言われて仕方なく重い腰をあげた。
見ず知らずの人と明日また会う約束をするのはなんとなくまだ怖かったが、子猫のため、明日の約束をしてしぶしぶ公園をあとにした。
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つづり(プロフ) - Moco.さん» コメントありがとうございます。初めていただいたコメントということもあり、とても嬉しかったです。ご期待に添える展開になるかはわかりませんが、精一杯頑張ります。元気をいただきました。ありがとうございます! (2018年6月7日 1時) (レス) id: 2b8a9cbc91 (このIDを非表示/違反報告)
Moco.(プロフ) - お話の世界に引き込まれて30頁一気に読んでしまいました。今後の展開がとても楽しみです!応援しています! (2018年6月6日 11時) (レス) id: a529d7a9bc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:つづり | 作成日時:2018年3月21日 3時