三十八、サッカーボール ページ39
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キコキコと自転車が鳴る。
まるで2人は定員オーバーだと、小言を言われてるようだった。
「望、どこ行くの?」
「河川敷。」
「っていうか、もう道覚えたの?」
「まだそこしか覚えてへん。」
「そっか。何するつもり?」
「サッカー」
「え。私サッカーなんて出来ないよ。」
「キャッチボールみたいにするだけやで。」
「絶対川に落ちる・・・。」
「俺が華麗にとるから平気や。」
腰の手で照れくさい気持ちをなんでもない話で紛らわしながら、河川敷に向かう。
たどり着いて手を離したら、なんだか肩の力が一気に抜けた。
「行くでー!」
年季の入ったサッカーボールを望がポーンと優しくこちらに蹴る。
蹴り返そうとして脚を振ると、思い切り空振り、そのまま転んだ。
「はははっ・・・Aほんまに出来ないんやな。」
望が爆笑しながら私の腕を掴んで起こしてくれる。
恥ずかしく思いながらも望が笑うのが嬉しくてつられて笑いそうになるが、少し意地を張ってそっぽを向いてみる。
「だから言ったのに・・・。」
「いや、そこまでとは思ってなかったわ。怪我してへん?」
「大丈夫・・・。」
「くくく・・・拗ねとる。」
「拗ねてないもん。」
「まあええわ。ちゃんと止めてから蹴れば返せるで」
「・・・わかった。」
望は笑いながら元の位置に戻り、もう一度ボールをこちらにポーンと蹴る。
望の言われた通りにすると、ボールはしっかり望の元に帰っていった。
「ほら、できたやん」なんて嬉しそうに笑う望の顔が、なんだか少し悔しいけど嬉しかった。
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つづり(プロフ) - Moco.さん» コメントありがとうございます。初めていただいたコメントということもあり、とても嬉しかったです。ご期待に添える展開になるかはわかりませんが、精一杯頑張ります。元気をいただきました。ありがとうございます! (2018年6月7日 1時) (レス) id: 2b8a9cbc91 (このIDを非表示/違反報告)
Moco.(プロフ) - お話の世界に引き込まれて30頁一気に読んでしまいました。今後の展開がとても楽しみです!応援しています! (2018年6月6日 11時) (レス) id: a529d7a9bc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:つづり | 作成日時:2018年3月21日 3時