三十七、二人乗り ページ38
.
次の朝になっても、父は帰ってこなかった。
それどころか、母ともすれ違ったようで、目が覚めても家には私一人だった。
シャワーを浴びて着替えリビングに行くと、テーブルの上に母の字で置き手紙があった。
“出かけます。お昼は冷蔵庫にあります。”
望が来るのは1時。
冷蔵庫の中にあった冷たいオムライスを温めて食べて、望がくる1時を待った。
「A」
玄関を出たところでぼーっと待っていると、突然大きな人影が目の前に現れた。
「わっ･･･ああ、望。」
「何ぼーっとしてんねん。行くで。･･･ってA、チャリは？」
「･･･持ってない。」
「はあ？！」
「だって、使わないもん。」
「もーしゃーないなあ。後ろ乗っけたる。」
「いやいやお巡りさんに怒られちゃう。」
「真面目か！」
「･･･重いって言わない？」
「俺そんなデリカシーない男ちゃうし。」
「それは絶対嘘だ。」
「なんでやねん！もおーええからはよ乗れやっ」
望は急かすように後ろをぽんぽんと叩く。
仕方なく後ろに乗ると望が後ろを振り返る。
「･･･なに？」
「しっかりつかまっときや。」
どこに捕まっていいかわからず、とりあえず肩に乗せると、望に手を掴まれる。
「肩はくすぐったいからここな。」
そう言うと手を腰に移された。
なんだか抱きついてるみたいで、少し照れくさくて、顔を上げずに「うん。」というと、2人を乗せた自転車が走り出した。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 69人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
つづり(プロフ) - Moco.さん» コメントありがとうございます。初めていただいたコメントということもあり、とても嬉しかったです。ご期待に添える展開になるかはわかりませんが、精一杯頑張ります。元気をいただきました。ありがとうございます！ (2018年6月7日 1時) (
レス) id: 2b8a9cbc91 (このIDを非表示/違反報告)
Moco.(プロフ) - お話の世界に引き込まれて30頁一気に読んでしまいました。今後の展開がとても楽しみです！応援しています！ (2018年6月6日 11時) (レス) id: a529d7a9bc (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：つづり | 作成日時：2018年3月21日 3時
