三十、重なる泣き声 ページ31
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動物園に入ってから、初めて並んで歩く距離感に最初は緊張しながらも、ゆっくりと2人の空気が出来ていく。
かわいい動物に癒され2人優しい顔になったり
ふれあいコーナーのヤギに追いかけられて笑いあったり
ライオンの迫力に思わず少し身を寄せあったり
時間の流れとともに、タメ口も呼び捨ても自然になっていく。
動物園も半分以上回ったあたりで休憩所のようなところで2人は足を止めた。
「A、アイス半分こせーへん?」
「え・・・うん。」
「チョコとバニラどっちがええ?」
「んー、智が好きな方でいいよ。」
「ならチョコでええ?買ってくるから座って待ってて?」
「わかった。」
智はそう言うと早足でアイス売り場に向かっていく。
そんな智の背中を眺めていると、ふと子どもの泣き声が耳に入る。
「おかあーさあーん・・・うわー・・・」
―おかあさん・・・おとうさん・・・
「どこいったのおー・・・うー・・・」
―どこ・・・どこ・・・
泣き声が重なる。
記憶に引きずりこまれる。
違う。あれは私じゃない。
「おかあさあん」
―おかあさん・・・おかあさん・・・
頭が痛い。
必死に目を開けようとすると、視界が赤く染まっていく。
―どうして。
手を見ると、手も真っ赤に染まっていた。
「A!」
意識が途絶える寸前、遠くで智の声がした。
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つづり(プロフ) - Moco.さん» コメントありがとうございます。初めていただいたコメントということもあり、とても嬉しかったです。ご期待に添える展開になるかはわかりませんが、精一杯頑張ります。元気をいただきました。ありがとうございます! (2018年6月7日 1時) (レス) id: 2b8a9cbc91 (このIDを非表示/違反報告)
Moco.(プロフ) - お話の世界に引き込まれて30頁一気に読んでしまいました。今後の展開がとても楽しみです!応援しています! (2018年6月6日 11時) (レス) id: a529d7a9bc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:つづり | 作成日時:2018年3月21日 3時