二十八、初めてのお出かけ ページ29
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翌朝、出かける旨を書いた置き手紙を残して眠ったままの母を置いて家を出る。
父は昨晩、結局帰ってこなかった。
まだ誰もいない公園のベンチに座っていると、ププッと車のクラクションが鳴った。
そちらの方を見ると車の中から眼鏡をかけた神山さんが手を振っていた。
「Aちゃん。おはよう。」
いつもとは違う彼に、少し緊張する。
神山さんは助っ席のドアを開けてくれ、私を車に招く。
招かれるまま神山さんの隣に座ると、神山さんが微笑んだ。
「ほな、行こか。」
「どこに行くんですか？」
「着いてからのお楽しみやで」
彼はそういうと、車を走らせる。
スーツ姿しか見たことがなかったから、私服の神山さんは新鮮で、いつもより若く感じた。
じーっと神山さんの横顔を見ていると、彼が困ったように笑った。
「そんな見られたら緊張して手元狂ってまうから、見んといて。」
はっと我に返り、窓の外に目を背ける。
「ごめんなさい。」
「ふふっ、そんなあからさまにそっち見んでもええけど。なんかいつもと雰囲気ちゃうから緊張してまうよな。」
「はい･･･。」
少しの沈黙が流れ、ややあってから神山さんが口を開く。
「なあ。敬語やめへん？」
「え･･･。」
「その方が緊張もほぐれるんちゃうかなって。名前も呼び捨てでええし。その代わり、俺も呼び捨てで呼んでもええ･･･？」
「はい･･･。」
「あ。はいやなくて？」
「うん･･･。頑張る･･･ます。」
「ふはっ、なんやねんそれ。」
「慣れなくて･･･。」
「ほんなら名前、呼び捨てで呼んでみて？」
「え･･･神山･･･？」
「いやいやなんでやねん！下や下！」
「ふふふっ。」
「あ、今のわざとやろ。もー。」
困ったように笑いながらも、楽しそうな彼が嬉しかった。
公園での時間はそんなに長くないからか、今まで見たことない神山さんを少しずつ発見していく。
そんな時間に緊張とは違う胸の高鳴りを感じる。
くだらない話をゆっくりしていると、いつの間にか目的地らしい場所に着いていた。
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つづり(プロフ) - Moco.さん» コメントありがとうございます。初めていただいたコメントということもあり、とても嬉しかったです。ご期待に添える展開になるかはわかりませんが、精一杯頑張ります。元気をいただきました。ありがとうございます！ (2018年6月7日 1時) (
レス) id: 2b8a9cbc91 (このIDを非表示/違反報告)
Moco.(プロフ) - お話の世界に引き込まれて30頁一気に読んでしまいました。今後の展開がとても楽しみです！応援しています！ (2018年6月6日 11時) (レス) id: a529d7a9bc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：つづり | 作成日時：2018年3月21日 3時
