二十一、公園で待つ人 ページ22
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―ハァ・・・ハァ・・・
走って公園に辿り着くとベンチに神山さんが座っていた。
こちらに気づくとクシャッと笑って立ち上がる。
「Aちゃん、こんばんは」
その笑顔に安心して、涙は溢れてくる。
ここに来れば、あなたに会えると思った。
あなたが笑ってくれると思った。
「Aちゃん・・・?どうしたん?泣いてる?えっなんで泣いてるん?どうしたんっ・・・」
神山さんは困惑した声でそう言い、私の頭をわしゃわしゃと撫でてくれる。
私の目をこする手をすり抜けて頬を両手で包み、私の顔を覗き込む。
「なあ、また怪我してる。何があったん。転んだんとちゃうやろ?俺じゃ言いづらい?」
何も返事もできずに泣き続けていたら、神山さんは見兼ねて私のことを抱きしめた。
「・・・っああもう・・・!泣き止むまでこうしたるから。気済むまで泣いてええよ。」
優しい彼の心にホッとして、さらに涙は止まらなくなる。
「ごめ・・・ん・・・なさ・・・い・・・」
詰まりながら言った一言に神山さんは「ん・・・ええよ」と優しい声で一言言って、黙ってそのまま背中をさすってくれた。
長い時間そうしていて落ち着くと、神山さんがココアをくれた。
「甘いもの飲むと落ち着くで?」
頷いて貰うと頭をそっと撫でてくれた。
神山さんはその後もしばらく黙っていたが、耐えきれず口を開いた。
「なあ。誰かにされたん?アザもあるし、血出てるとこもあるし。抜けてるとかそういうんじゃ済まへんよ?」
「大丈夫です。何もないです。本当によく転ぶだけなんです。」
「じゃあなんであんなに泣くん・・・。」
自分のことではないのに、彼は苦しそうな顔をしている。
「・・・ごめんなさい。」
「謝らんでや・・・。」
少し怒ったように彼は小さく言う。
「わかった。もう聞かへん。その代わり、連絡先あげるから、何かあったら連絡して。一人で泣かんで。すぐかけつけるから。絶対やで?」
そう言って小さな紙に番号を書いて渡してくれた。
「いつでもええから。な?」
受け取った紙に書いてある字は少し癖のある、でも綺麗な字だった。
「・・・ありがとうございます・・・」
そう言うと彼は笑って、それにまた少し泣いてしまった。
ココアはとても甘くて、安心した。
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つづり(プロフ) - Moco.さん» コメントありがとうございます。初めていただいたコメントということもあり、とても嬉しかったです。ご期待に添える展開になるかはわかりませんが、精一杯頑張ります。元気をいただきました。ありがとうございます! (2018年6月7日 1時) (レス) id: 2b8a9cbc91 (このIDを非表示/違反報告)
Moco.(プロフ) - お話の世界に引き込まれて30頁一気に読んでしまいました。今後の展開がとても楽しみです!応援しています! (2018年6月6日 11時) (レス) id: a529d7a9bc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:つづり | 作成日時:2018年3月21日 3時