ページ ページ16
##
「……はいっ！」
バトンを手に押し込まれ、足に体重を載せる。
速く走る、とは非常に簡単なことだ。大股で、それを速く動かせばいい。そのために必要な考え方は、私の天性のセンスにより、本能的に備わっていた。
本気＝ガムシャラ、と多くの人は考えているはずだ。だから、私は少しでもガムシャラにやっているように見せればいい。
練習の時より速く風を切る。体を前に傾けて、疾風に身を任せる。
――ああ、これが本気なのだろうか？
隣の組の子はどうやら運動が苦手なようで、顔を真っ赤にして走っている。それを馬鹿にしていると勘違いされない程度に横目でちらりと見て、颯爽と抜かしていく。心地よかった。人を抜かす感覚が、と言えば私がクズであるように聞こえるけれど、誰かと競走して勝つのはやはり快いことであった。
スピードを落とさず。練習で教えられた、約８メートルくらいの時に「走れ」と次の走者に声をかける。彼は走り出し、構えられたその右手にバトンを押し込む。
私の仕事はこれで終わりだ。あとは、彼が走ってくれる。
「お疲れA。過去一の走りだったじゃん！」
「ありがと。頑張った」
女友達に話しかけられ、当たり障りない返答をしておく。ちらりと私のクラスのレーンを見れば、七人目があと十五メートルくらいでバトンを繋げそうな位置にあった。
しかし、次の瞬間、彼はドテッと綺麗に転んでしまった。周りがざわめいた。リレーはバトンを落としたら終わり。転んだ落としていたらまずいし、何より彼は今顎から着地するという最悪な転び方をしたからだ。
##
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 54人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
露萩(プロフ) - みきさん» コメントありがとうございます😁💕 その様にご応援いただけて誠に光栄です🙌🏻😭 更新の励みになります💕 (4月29日 11時) (
レス) id: 59536f34c0 (このIDを非表示/違反報告)
みき(プロフ) - 更新が待ち遠しい……文才も神ってますね!!夢主様の設定とか諸々好きです💞応援してます!! (4月29日 10時) (レス) id: aa3c92bdc8 (このIDを非表示/違反報告)
露萩(プロフ) - 時雨さん» コメントありがとうございます😁💕 そういう風に言っていただけて光栄です🙌🏻 更新の励みになります💪🏻 (4月7日 14時) (レス) id: b331db759b (このIDを非表示/違反報告)
時雨 - とても面白かったです！いままで読んできた作品には無いようなキャラとの距離感でこの後の展開が気になって仕方ありません…！更新楽しみにしてます！！ (4月7日 13時) (レス) @page20 id: 301607acc2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
