ページ ページ11
##
彼に悪気がないのはわかっている。わかっているんだけど……。
「いえ、大丈夫です。全然」
そうとしか言えなかった。
幸いにも少年は、「バレー辞めたの？」とか、そういうプライベートな質問をしてこなかったのでありがたかった。
「ああ、改めまして、鈴瀬Aです。よろしくお願いします」
「鈴瀬って、やっぱあの鈴瀬だよね！？ あの天才ミドルブロッカーの！！」
少年は瞳をキラキラと輝かせた。私は「ま、まあ……？」と疑問形で返しておくことにする。
しかし、少年の興奮はまだやんでいないようで、黒髪の人がその少年を見て訊ねた。
「え、何々、有名人？」
「はい！ 確か去年の女バレで決勝まで行ったとこのエースですよ！！」
俺、たまたま見てたんです！ スパイクもブロックもすごくて、ずっと生で見てみたいなって！！
と、少年は熱弁した。
「へー！！ 研磨、こんなすごい人とのコネ持ってたワケ？」
成長したジャン、と、黒髪の人が興味津々に私を見たので、とりあえず苦笑いを返しておく。
それは研磨も同じだったようだ。
「おれだって知らなかったし……」
「もっとコミュニケーション取りなよー、せっかくの友達デショー」
黒髪は母のようにそう言いながら、研磨の頭をわしゃわしゃと撫でた。
「そんな天才がマネやってくれんのかー、心強いコト」
そう言って黒髪はニヤッと笑った。
「あ、俺、夜久衛輔、二年。リベロやってる。これからよろしくな！！」
そう言って夜久先輩はにかっと笑った。眩しい笑顔といきなりの自己紹介にひるんでしまい、「よ、よろしくお願いします……」と、蚊が鳴くような声で返すことしかできなかった。
「俺、黒尾鉄朗ネ。俺もミドルブロッカーだから、これからよろしく」
そう言って、差し出された手を私は握った。これから私の、新たなマネージャーとしての生活が始まるのだ、と、未来を楽しみにしながら。
##
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 55人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
露萩(プロフ) - みきさん» コメントありがとうございます😁💕 その様にご応援いただけて誠に光栄です🙌🏻😭 更新の励みになります💕 (4月29日 11時) (
レス) id: 59536f34c0 (このIDを非表示/違反報告)
みき(プロフ) - 更新が待ち遠しい……文才も神ってますね!!夢主様の設定とか諸々好きです💞応援してます!! (4月29日 10時) (レス) id: aa3c92bdc8 (このIDを非表示/違反報告)
露萩(プロフ) - 時雨さん» コメントありがとうございます😁💕 そういう風に言っていただけて光栄です🙌🏻 更新の励みになります💪🏻 (4月7日 14時) (レス) id: b331db759b (このIDを非表示/違反報告)
時雨 - とても面白かったです！いままで読んできた作品には無いようなキャラとの距離感でこの後の展開が気になって仕方ありません…！更新楽しみにしてます！！ (4月7日 13時) (レス) @page20 id: 301607acc2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
