人狼J -sss- (ページ9)

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ニックせめてキスを終えるまでページ9

「まったく、不粋な奴らだねぇ。」

彼の温かい手が、私の身体を滑る、滑る。
彼と自身の体温が混ざって、肌と肌の境目が曖昧になる感覚がする。

彼が狼たちと内通していることに気付いたのは私だけだった。
2人でこの屋敷から出よう。
そう言ってくれた彼を信じて、今日まで2人で生き残っている。

私は普通の市民で、彼は狼陣営で、でも私たちは恋人で。
不安になることはあっても、この不可解な関係を辞めたいとは思わなかった。
それはきっと、彼が彼なりに、真摯に私を愛してくれているのが伝わってくるから。

彼を呼ぶ仲間の声が、ドア越しにどんどん大きくなっているのが聞こえる。
今夜もまた彼は行ってしまう。狂ったように血肉を貪る、卑しい狼の元へ。

「そう心配そうな顔をしなさんな。今更ヘマなんかしやしないよ。」

私の身体中に音もなくキスを落とす彼は、暗がりの中でその表情を読ませてはくれない。逆光の中、貴方は私の顔を見ているのに。
ずるい、そんな思いで彼の顔を手繰り寄せる。
意図に気付いた彼は、私の唇に指を這わせた。

「……ああ、惜しいな。」

絞り出すように言った彼の言葉の真意を理解することは出来なかったけれど、爛々と光る獰猛な瞳だけは見て取れた。

ずっとこうしていられたらいいのに。

喉まで出かかった言葉は、寸前で飲み込んだ。

「せめて、」

(このキスを終えるまでは)

貴方は闇に染まらないまま、どうかここに居て。

ささやく狂人(恋人)ニック×市民(恋人)