フランク あと少しの嘘だから ページ8
「ねえフランク。この屋敷から出たら、一緒にハムレットを見に行きましょう。」
そんなことを言って微笑んだきみが、どうしようもなく眩しい。思わず目を細めて口をつぐんだ僕を、きみは不思議そうに眺めていたね。
「……行けたらいいね。」
そんな曖昧さで誤魔化す僕を、僕の弱さを、どうか許してほしい。
眉を下げて笑ったきみは、きっと僕のそんな浅ましさを見抜いていた。
ねえ、そうなんでしょう？
だっておかしいじゃないか。
そうじゃないならなんだって言うんだ。
だって、なんで、こんな、
「…どうしてここにいるの、」
「……ねえフランク、一晩匿って欲しいの。」
ああ、嗚呼、君は、どうして騙されてくれないんだ。
「僕はきみを、オフィーリアにはしたくないよ………！」
コツコツ、と一歩ずつ近づくきみに、僕はジリジリと後退りする。
今にも目覚めてしまいそうな本能を、自分の腕を思い切り抓ることで引き止めている。
でも正直、限界だ。
「頼むから、僕に近づかないで…っ、ぁ！」
脂汗を滲ませる僕に、きみはそっとハグをして。
「誰かに噛まれるくらいなら、貴方に連れて行って欲しいの。」
そう言ったきみの前で悪化なく散った理性に、きみはことさら綺麗に微笑んだ。
それはさながら、中世に輝く狂気の貴婦人のよう。
(ごめん、……ごめん)
きみの瞳に生理的な涙が浮かぶのを、どこか遠くで眺めていた。
口にするのもおこがましい謝罪の言葉を、脳裏に描きながら。
人狼フランク×逃亡者
ニック せめてキスを終えるまで→←フレディ この痛みすら愛しくて
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作者名：sarry | 作成日時：2020年4月22日 16時
