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会話はなく、ドライヤーの音だけが響く。

多少力加減に気を付けてはいるのだろうが、沖田の乾かし方は力強くわしゃわしゃと
かき回すようで、
それも中々マッサージみたいでいいアルなとAは心地良さそうに目を細めた。


そしてふと、自分はいつも行動を比べていると気づく。

いつも何かをすれば、してもらえば、その度に無意識に否応なしに 神威をどこかで思うのだと。

今だって、沖田と神威を比べていた。

神威は時間がある時はよくAの髪を乾かしてくれていたから。
おかげでその手つきは慣れたもので、優しく撫でるように行われていたから。

神威から与えられた全てが骨の髄まで染み込んで、
神威の存在が、Aの生きる基準なのだ、と。

唐突に今、それを自覚して。
そしてそのことに、初めて恐れを抱いた。

―――自分はこれまで、きっと何も知らな過ぎた。



「こんなモンだろ」

十分に乾いたと判断した沖田が、ドライヤーを止める。

「……あ、ありがとアル!」

はっとしたAが、慌てて振り返ってお礼を言った。

そんなAをしばらく見つめて、沖田は口を開く。

「さっき、何考えてた?」

「……えっ」

「例えば兄貴……神威ってやつのこととか」

「!」

Aの反応を見て、沖田は皮肉げに笑う。

「図星かィ」

「なんで……」

分かったのか、それは。

「二度も同じ面して考えこまれてりゃ嫌でも気づく」

二度、というのに疑問が浮かんで
もしやイルミネーションを見上げていたあの時だろうか、とAは思う。

きっと1日一緒にいて、Aをよく見ていた沖田だから気づいたことだ。

自分が一体どんな顔をしていたのか、Aには分からなかった。


場の空気と、表情には出さずとも沖田の機嫌が悪くなったのをAが察する。


「……それよりっ、そーごも髪乾かしたらどうアルか?
代わりに私が乾かしちゃるネ!」

そしてこの状況を打破するためには話題を変えるしかないと、明るく提案して沖田と同じようにベッドへ乗り上げた。

「俺ァもうほとんど乾いてるから必要ねーぜ」

「いーからいーからアル」

Aが沖田の脇に置かれたドライヤーを取ろうと手を伸ばしたところを、
沖田が先に手に取ってひょいっと遠くへ放り投げたものだから
Aは前のめりに大勢を崩して倒れこむ。

それは沖田に覆い被さるような形になって、Aが顔を上げれば至近距離に沖田の顔があった。

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設定タグ:銀魂 , 神威 , 成り代わり   
作品ジャンル:恋愛
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ぽてうさ(プロフ) - ゆるさん» ありがとうございます!!書いててよかったってなる嬉しいお言葉です(*^^*)近い内に続編も公開予定なので少々お待ち下さい! (2020年5月2日 11時) (レス) id: d2b650a918 (このIDを非表示/違反報告)
ゆる - すっごく面白いです!早く続きが読みたいです!更新頑張って下さい!応援してます♪ (2020年5月1日 11時) (レス) id: 647e80459a (このIDを非表示/違反報告)
ぽてうさ(プロフ) - ついに総悟さん行動にでました(°口°)こちらこそありがとうございますです_|\○_ 作者としては優しい沖田総悟を書くのが難しくて苦労してます笑  (2020年4月7日 23時) (レス) id: d2b650a918 (このIDを非表示/違反報告)
鈴音(プロフ) - 総悟ぉぉぉーーーーーΣ(゚Д゚;≡;゚д゚)すみません荒ぶりました← 何だろう…何か…もう…ほんとありがとうございます(((語彙力 (2020年4月7日 21時) (レス) id: 737011c58c (このIDを非表示/違反報告)
ぽてうさ(プロフ) - 至恩さん» 久しぶりとなってしまった更新で、こんなコメント貰えるなんて本当に嬉しくて続きを書くモチベがぐんぐん湧いてきます!ありがとうございます(●´ω`●) (2020年3月14日 23時) (レス) id: d2b650a918 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ぽてうさ | 作成日時:2019年2月6日 19時

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