【ツルネ】玲瓏

1５音 ページ17

今日はお休みだったため中崎弓具店へと向かう


丁度買い足したい備品があった




お店のドアを開けると中崎さんが私に気づいて声を掛ける

中「おお！Aちゃん！いらっしゃい！」

『こんにちは』
と言葉を交わらせたとき店内にいた2人がこちらを向いた



本「Aさん？」

佐「なにぃ？！！Aちゃんだと？！」

本村部長に佐瀬先輩…
まさか今、会うなんて

『先輩達もこんにちは…』



佐「久しぶり！！Aちゃん！私服姿っっ！こんな貴重な場面に立ち会えるなんてっ！俺は幸せ者だっ！」



中学の時から変わらない佐瀬先輩に苦笑いしか出ない…



本「騒がしくてすみません、お久しぶりですAさん」

中「久しぶりって、Aちゃん、桐先じゃないのか？」

『あー、私、風舞に進学したんです』

中「ほう？風舞に？！意外だな…」

佐「Aちゃん！今からでも桐先に！！！！」


暴走する佐瀬先輩を宥めながら本村先輩も口を開く


本「僕もAさんには桐先に来ていただきたいですけどね」

こちらをみて微笑む本村先輩


















お店を出た後、本村先輩に聞きたいことがあると2人で公園のベンチに座った



佐瀬先輩は俺も行く！！！と叫んでいたが渋々先に帰った











きっと聞かれることは《あの時》のことだ



なんとなく嫌になって
目線を地面に向ける



本「すみません、引き止めてしまって」

『いいえ、大丈夫ですよ』








本「単刀直入に聞きます」



本「貴方が最後の全国大会の個人戦、優勝寸前で辞退した理由はなんですか？」




やっぱり、


私だって優勝するつもりだった

あの時の記憶が脳裏をよぎって感情が溢れ出しそうになる

私は答えなかった



そんな私を見兼ねた先輩は私にさらに追い打ちをかけた











本「やはり、【織澤 百合】が原因ですか？」






その名前に私は目を見開き固まった


『どうして、それを…』

本「すみません、貴方にそんな顔をさせたいわけじゃないんです」


私の手を優しく撫でる本村先輩


本「それは…」


差し出されたのは一枚の写真

『これ、』

本「拾ったんです
渡さずに申し訳ありません」



『すみません、今日はもう失礼します』
混乱した感情を抑え、立ち上がり、先輩から逃げた


ただ、走った

写真と久しぶりに聞いた彼女の名前がつらくて
涙が出てくる





“ねぇ、A、百合はね、Aがいればそれでいいの”

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