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第147話 ページ8

俯いて言葉を失った僕にゆるく微笑むと、薬研は頬にガーゼを貼りながら、落ち着いた声音で頷いた。


「そうだな。あんたが人間だからとか、弱いからそんなこと言ってるんじゃない。
大事だから心配するし、怒るんだ。わかるな?」

「…うん」


慣れた手つきでガーゼを貼り終えると、薬研は優しく笑って頭を撫でてきた。
彼のおかげで、僕がどれだけみんなに心配をかけたのかをようやく理解できたから、大人しくされるがままにしておく。

…そっか。僕もう、一人じゃないんだ。


「わかったなら、もう一度約束しろ。
無茶をしないこと。何かあったら一人で抱え込まず、誰かに相談すること。
今度破ったら、お前を椅子に縛り付けて目の前で祖の特製プリンを味わってやるからな」

「はい!はい!約束します!真名に誓います!!
っう、いてて…」

「どんだけプリン食いてぇんだ…」

「はっはっは」


長義の脅し文句に元気に挙手して宣誓すれば、腕が痛くて堪らずうめき声をあげる。
それを薬研と三日月に笑われてしまった。

先日おやつにもらった燭台切のプリン、神の食べ物かと思うくらい本当に美味しかったので。
それをお預けにされた挙句目の前で食べられるなんて、そんなの冷却水に顔を沈められた方がマシである。

もう二度と無茶はしない…プリンのために…と心に誓っていると、三日月が肩にジャケットをかけてくれた。
このジャケットは一期に預けていたものだが、どうやらここに来る前に引き取ってくれたらしい。

ちなみに、その一期は現在信濃のそばにいてもらっている。
あんなことがあった直後なので、何か異変があると困るため信濃にも一応安静にしてもらっているのだ。

ところで、ジャケットは無事だけれど、かまいたちによって散々切り裂かれたワイシャツはお陀仏となってしまった。中に着ていたハイネックのインナーも同様である。

特に手首から二の腕にかけての負傷が激しく、あまり腕を動かせない。
ので、現在の僕は肩から胸と、腕全体に巻かれた包帯の上にジャケットを肩にかけているので、中々に族みたいな見た目をしている。これでジャケットの裾が長かったら完全に族だな。

腕に負担かけないように、スーツじゃなくて和装の方がいいかな…でも結界張る時に着た装束は二代目のだったから、少し大きかったんだよな。
あとで例の友人に僕用の袴と白衣(びゃくえ)を送ってもらおう、と心に書き留めていると、道具を片付ける薬研に長義が首を傾げた。

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作者名:寒蘭 | 作成日時:2023年12月2日 0時

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