第185話 ページ46
「な、なんで、大倶利伽羅が…
君、うちの大倶利伽羅だよね…？」
「…あんたたちが戻ってこないから、様子を見に行ってこいと」
不機嫌そうに顔をそらす大倶利伽羅に横抱きにされたまま、その少ない言葉で大体の成り行きを悟った。
気づけば、僕らが本丸を出てから結構な時間が経っている。
それでも戻ってこない僕らを心配して、代表として来てくれたのか。
けれど、先ほど一瞬聞こえた声は、大倶利伽羅のものではなかったような…と周囲に目を配ると、豪華な衣装を身にまとった者がこちらに駆けてきてまた驚いた。
「ナイスキャッチだったぜ、伽羅！」
「た、太鼓鐘!?君も来てくれたの？」
「おう！本当はみっちゃんや鶴さんも来たがってたけど、短刀がいねーってことで俺が来たぜ！ゲートを通った瞬間落ちてきたもんだから、すげぇ驚いたよ」
「ありがとう…！本当に死ぬかと思ったから、二人が来てくれて助かったよ」
輝かんばかりの笑顔に胸を撫で下ろし、とてつもなく運が良かったことを悟る。
転移ゲートを通ってすぐ目の前で鬼に捕まれた僕が落ちてきたものだから、咄嗟に太鼓鐘が鬼の腕を斬りつけて、大倶利伽羅が受け止めてくれたようだ。
それにしても、さっきまで長義たちがあんなに苦戦していた鬼の腕を、半分切り裂いてしまうなんて…
後から知った話だが、太鼓鐘はあの本丸で五虎退の次に来た短刀だったらしい。道理で強い訳だ。
「時雨！無事か!?」
太鼓鐘から本丸は無事という報告を受けていると、三日月たちが追い付いた。
大倶利伽羅に下ろしてもらい、血相を変えて駆けよってきた三日月に近づく。
「うん、僕は大丈夫。この二人が助けてくれたから。
それより、長義は大丈夫なの？派手に吹っ飛ばされてたけど…」
「あぁ。不覚を取ってしまったが、問題ないよ」
「お前たちも来ていたか」
問題ないといいつつ、中傷を負っている長義を心配していると、三日月が太鼓鐘たちに気づいて頬を緩ませる。
それに太鼓鐘がおう！と笑顔で答えると、遠くで鬼の唸り声が響いた。
全員がそちらに刀を向けると、腕を斬られて床に伏せていた鬼は、まだ霊力に余裕があるのかもう斬られた腕がくっついている。
「…あ、思い出した。あいつの倒し方。
奈落の底に突き落としたんだ」
「…この近くに奈落などないが」
「だよね。そもそもその時は結局死んでなくて、近くを通りがかったこちら側の刀剣男士に討伐されてたはず」
「あはっ、はた迷惑な奴らだね」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 255人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：寒蘭 | 作成日時：2023年12月2日 0時
