第180話 ページ41
「なっ…なんで、なんでだよ長義!!どうして!!」
「ははっ…よかったじゃないか、自分を慕う刀剣男士ができて」
投げられた物を上手く受けとった睡蓮は、そう言いながら見せびらかすように手にしたUSBをこちらに向けて振る。
それを奪い返そうともがいても、想像以上に強い力の浦島に引き留められて動けない。
やがて睡蓮はUSBを明石に渡すと、彼は自分の相棒に目配せしてから、片手でそれを握りつぶしてしまった。
粉々になったUSBが、明石の手の中から零れ落ちていく。
「そんな…」
絶望で力が抜け落ちる。
やっと、これでようやくすべてが終わると思ったのに。
母様も、今まで遡行軍で命を落とした審神者たちも、やっと報われるはずだったのに。
三日月たちの主も見つかって、彼らの苦しみも終わるところだったのに。
僕のせいで…──！
「──これはどういうことか、説明してもらうぞ」
突如響いた、聞き慣れない低く重々しい声に意識が向かう。
開け放たれた扉から姿を現した声の主は、軍服に真っ赤なマントを羽織る体格のいい壮年の男だった。
その背後には髭切と膝丸が控えており、さらに澪ちゃんも後に続いている。
ということは、彼が──中央軍部の頭領、元帥。
「元帥！お待ちしておりました。実はこの者たちは我らの宿敵、歴史修正主義者の間者としてこの時の政府に入り込み、嘆かわしくもこれまで審神者を幾人も──」
「黙れ。儂はこやつらについて聞いているのではない…
貴様に、どういうことかと聞いている」
「は、ぇ…？」
ビリリと、凄まじい殺気に空気が揺れる。
それにまともにあてられてしまった睡蓮は、先ほどの饒舌さはどこへやら、情けない声を捻りだして膝を震わせた。
どういうことだ…？元帥は今来たばかりのはずなのに、なぜまるでこれまでの状況を見ていたかのように睡蓮を厳しく責め立てているのだろう…
皆が同じように困惑を隠せずにいると、元帥は睡蓮を鋭く睨みつけたまま口を開いた。
「…澪。ホールの映像を」
「承知しました」
つい数刻前の騒がしい様が嘘のように恭しく頭を下げると、澪ちゃんは先ほど長義が操作したパソコンに近づき、手早く操作を始める。
それから間もなくして、また同じように壁掛けの大きなモニターにとある映像が流れ始めた。
そこには──つい先ほど破壊されたばかりのUSBに入っていた映像が、そっくりそのまま映し出されていた。
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作者名：寒蘭 | 作成日時：2023年12月2日 0時
