第177話 ページ38
「なんだと…?」
僕の言葉に片眉をぴくりと跳ね上げ、睡蓮は理解が及ばないというように表情を胡乱とさせる。
そんな睡蓮から長義に視線を移すと、彼は心得たように一つ頷き、懐からあるものを取り出して一台のパソコンに近づいた。
「睡蓮殿。我々が彼を連行したのは、彼が本丸内でこれをコソコソと隠し持っていたからでね…
それを今から
そう言いながら長義は取り出したUSBメモリをパソコンに挿し、マウスを操作して何かのファイルを開く。
すると、部屋の壁に掛けてあった一際大きなモニターに、突然動画が映し出された。
まもなく再生されたその動画の内容に、睡蓮はみるみる顔を真っ青に染めていく。
なぜなら、その動画には、二代目と共に歴史修正主義者の男と密談する、睡蓮の姿が映っていたからだ。
「この映像について…何か、言うことは?」
「こ、これは…違う!これは私じゃない!」
心臓が凍りつきそうなほど冷たい長義の眼差しに、睡蓮は青い顔のままデタラメに否定してみせる。
本当はあのUSBメモリの証拠、元帥に直接提出したかったけど…時間稼ぎのために挑発しすぎて怒らせても面倒だし、もうここで見せてしまって戦意喪失させた方が早い。
加州が記録しておいたらしいこの映像は、人物の顔も声もはっきり識別できるほど詳細に録画されていて、言い逃れするにはあまりにも無理がある。
一体どんなものが飛び出るかと思っていたけど…これは予想以上だな。
初めて見る証拠映像に改めて、加州がどれだけ危険を冒しながらこれらを集めたのかを実感する。
こういった隠密の仕事は、短刀の方が得意なはずだ。
それでも彼は、仲間を危険に晒さないため、一振で…
彼の決意を無駄にしてはならない。
僕は呪符を解こうと身をよじらせ、長義を振り向き──
──その影に潜むように刃を引き抜く存在を見つけ、叫んだ。
「長義!」
「っ!」
僕の声にいち早く反応した長義は、足元の刺客に気づくと素早く刀を抜いて、振るわれた刃を受け止める。
しかしそちらに気を取られた次の瞬間、僕は背後から何者かに抱き留められ、そのまま首に刀があてがわれた。
「…ごめんな」
耳元でそう囁いたのは、浦島虎徹。
長義に斬りかかったのは、小夜左文字だ。
恐らく、モニターを監視していた政府職員の相棒だろう。
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作者名:寒蘭 | 作成日時:2023年12月2日 0時