第154話 ページ15
「あのさぁ…!そういう風になるんなら先に言ってもらえるかな!?
俺みたいな二束三文の刀にそこまでしなくたって…うぅっ、お腹痛い…」
「はぁ…は…え?ごめん…」
無事に呪いを解くことができて噎せ返っていた僕が落ち着いた頃に、村雲江が悲痛な面持ちで胃を押さえた。
僕の思惑通り、三日月が村雲江を宥めてくれていたようだが、それがあっても納得いかないらしい。
三日月からもらった水を飲み干して一息つき、呪いが剥がれた刀身を柄に戻していく。
「詳しい話をしなかったのは、悪かったと思ってるよ…
でもさ、君が二束三文の刀だとは思ってないし、君のことを待っている仲間がきっといるんだ。
なら、僕はこんな制約なんかで君を見捨てたりしないよ」
鞘に納めた刀を、村雲江に差し出す。
そんな僕を見返す彼の瞳は、しっかりとこちらを捉えていた。
やがてしばらく見つめ合うと、村雲江は諦めたように深いため息をついて、そっと僕の手から刀を受け取った。
「君さ…頑固とかよく言われない?」
「うーん…バカとか向こう見ずとかはよく言われるけど、頑固は初めてかも」
「そう…なんか、君を見てたらカシラのこと思い出しそう。
無鉄砲で考え無しで、すぐ雨さんや豊前ととんでもないことして、よく松井に怒られてたんだっけな…そのくせ一度決めたら曲げないところも、ちょっと似てる」
「へぇ…喜ぶべきかわかんないなそれ…
でも、みんな仲いいんだね」
「うん。うちの本丸、ちょっと特殊なんだけど…
俺を含む郷義弘の作刀たちは、元々別の本丸で顕現されたんだけど、そこの審神者が間もなく退任してしまって…それで行き場のなくなった俺たちを、カシラが拾ってくれてさ。
カシラは政府所属だったから本丸は持っていなかったんだけど、それを機に自分の本丸を持って、政府の仕事と兼任することになったんだ。
だから俺たち、数ある本丸の中でも珍しい、本丸初期メンバーの江なんだよ」
「そ…れは、珍しいね」
お腹の痛みが落ち着いたのか、嬉しそうに話す村雲江につっかえた相槌を返す。
その僕の様子をよほど驚いていると受け止めたのか、「でしょ」とはにかむ村雲江に誤魔化すように何度も頷いた。
それから礼を言いながら手入れ部屋を後にする村雲江を見送り、僕は一人額に冷や汗を滲ませる。
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作者名:寒蘭 | 作成日時:2023年12月2日 0時