第152話 ページ13
というのはまぁ冗談で、資材を片付けてくれた三日月も伴い、三人で手入れ部屋へ向かう。
その道すがら、浮かない顔をする村雲江に笑いかけた。
「あのね、村雲江。僕別に、失礼なことされたとか思ってないよ？むしろ面白がってるし。
逆に、君から来てくれたのが意外だったかな」
「…君が、"僕に刀を預けてもいいと思えたら"って言ってたから…」
「えっ…嬉しいな、どういう心境の変化？」
思いもよらぬ返答に驚いて顔を覗き込むと、彼は立ち止まって空を見上げる。
彼の瞳にどれだけのものが映っているのかはわからないが、その表情は柔らかく、どこか愛しいものを思い出すような慈愛に満ちていた。
「君が結界を張った時…俺、はっきりとは見えなかったけど…その結界の霊力が、すごく澄んでいることだけはわかったよ。それで…あぁ、カシラの霊力はもう少しくたびれてたな、なんて思っちゃって…」
「！…自分の本丸の事、思い出したの？」
「少しだけだけどね」
ふにゃりと眉を下げて笑う村雲江に、失っていた己の本丸の記憶が少しだけ蘇っていることに歓喜する。
結局、まだ彼の本丸がどこで、何が原因で飛ばされてしまったのかはわからないままだが、それでもこうして思い出せたことは一歩前進だ。
「呪いが取れて見えるものが増えたら、もっといろいろ思い出せるかもね」
「だといいんだけど…」
ようやく手入れ部屋に到着したので、中に入り村雲江の刀を受け取る。
今回は万が一を考えて手入れ部屋に来ているけれど、別に手入れが目的ではないので、三日月にはそばに控えてもらうことにした。
というか、あまりにも心配するので仕方なくって感じなんだけど…
よし、と意気込んでから村雲江の刀を引き抜き、刀身を柄から外して茎を確認する。
太鼓鐘の時と同じなら、ここに呪いの形跡があるはずだが…
「…あった。やっぱり茎に隠されてるね。
でも、村雲江ってこの本丸に来てから負傷したことないんだよね？手入れのタイミングもなかったはずなのに、どうして茎に呪いが…」
呪いをかけるには、その部分に直接やらなければならない。柄の上から茎に呪いはかけられないし、その場合柄にはっきりと紋が浮き出るはずだ。
けれど柄に紋は現れず、茎にあるということは、二代目が村雲江の刀身に触れたことがあるということになる。
いつそんなタイミングが…？と思っていると、腕を組んだ村雲江が首を傾げて低く唸った。
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作者名：寒蘭 | 作成日時：2023年12月2日 0時
