九秋審神者、黒本丸を立て直す肆 (ページ11)

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第150話ページ11

わざわざあのようなもの(・・・・・・・)と表現するってことは、三日月は信濃から出てきたあれが何なのか、多少なりとも理解しているのだろう。
さすが平安刀、その知識力と直感力は侮れないな…

──信濃から出てきたあれは恐らく、守り神だ。
それも妖怪や若い神などではなく、しっかりとした神格を得た強い神。
信濃の刀を解放した瞬間、彼の刀が抜刀できなかった理由を理解した。

それは、あの龍たちが、信濃の刀を守っていたのだ。
だから刀を抜こうとする者は、例え本刃であっても攻撃したし、なのに刀には傷一つつけなかった。

そしてあの龍たちは、僕の中にあった二代目の霊力を、すべてごっそり持って行ってしまった。
それはつまり…刀を守るという役目を終えた後、霊力を提供するとでも契約していたのだろう。
だが、もしそれが本当だとすると、いよいよ二代目の印象が変わって来る。

なぜ…二代目はわざわざ、信濃の刀をあんな格上の守り神に守らせたのだろう。

でも、僕はそのことを三日月たちには言わない。
いや…三日月はもしかしたら、薄々気づいているかもしれないけれど。
しかしそれでも、これまで己らを傷つけ、苦しめた存在が、それらすべてを"演じていた"のだとしたら…

行き場のなくした憎しみは、浄化されぬまま蝕んでいく。
それはきっと、二代目の本意でもないはずだ。

まだ二代目がどうしてそんなことをしていたのか、すべてを知ることはできていないけれど…
もしもこの"憶測"が事実なんだとしたら、この本丸の者に悟らせてはならないのだ。

「はぁ…そこまで言うならわかったよ。これ以上追及はしないでおいてやる」

「うん、ごめんね」

三日月の助け船のおかげで、長義も納得してくれたので胸を撫で下ろす。
と、空気を変えるように三日月がそういえばと明るい声で呟いた。

「雛よ。随分前に、あの椿という政府の者に審神者名を決めるよう言われておらんかったか？あれからどうだ、決まったか？」

「あーそういえばそうだったね。すっかり忘れてた。
うーん…そうだなぁ…時雨、とかどう？」

「忘れていた割に即決するんだな…」

「名前自体はちょっと前から考えてたからね」

「ふむ、時雨か…良い名だな」

考えるだけ考えて申請を出さずに放置していた、審神者名の存在を思い出して即決する。
長義に端末を借りて椿さんにメッセージを送ると、「申請しておく」と短い返事が来た。