【d!】私に逢いに来てください【短編集】 (ページ11)

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∟絵＿Gr＿鶴　※ボカロパロページ11

あれから数日。私はひたすら線や円を描く。
私の割り切れないこの思いはそこに行ったり、どこかに行ったりで安定しない。
分からないけどただただ無心で絵を描く。...ああもう嫌だ。今日は先に帰ろう。
先輩に帰ると伝え、美術室から出る。

『あの、ごめんなさい。今日は帰ります』

Gr「...そうか。気を付けろよ。」

『...はい。』

外に出ると、雨が止んだ後なのか校庭が湿っていた。
なんだか重たい気分のまま歩いていると、手にポタリと何かが落ちてくる。
自分の手を見てみると、屋根が弾いたのであろう水滴が落ちてきていた。
その水滴は、新たにコンクリートの道を湿らす誰かさん(私)の涙に似ていた。

『...はぁ。』

家に帰って来た。
その辺に鞄を放り投げ、ソファーに座る。
...顔でも洗おうかな、そう思って鏡を見る。

『...あれ...。』

あぁ、やっと見つけた...私。
人生が苦痛そうな顔、つまらなそうな顔。
昔の私(思い描いていた姿)からは程遠い変わり果てた姿だった。
そんな姿がとても醜く見えて...家でも頑張って描いていた「私」を裸足でそっと蹴った。

『ふふ、やっと見つけられた。』

次の日の放課後。
私は先輩より早く美術室に来て、絵を描いた。ずっと絵を描いていた。
絵に描ききれない言葉も無理矢理詰めて描く。
夢中になるほど描き続けた。

『...あっ！』

ふと美術室に風が吹いた。
鮮やかに彩られた紙が弧を描いて、空を切りながら「誰か」の元へ行ってしまった。
私は急いで空を追う。体力が切れてでも走って追いかける。
あの絵を見せたい、褒められたい。だから夢中で絵を追いかけた。
するとその絵はいきなり宙でピタリと止まる。

『あ、止まった！...って、へ？』

Gr「全く...どうしたらここまで飛んでくるんだ。」

先輩が私の絵を取ってくれたみたいだ。
落ち着いて辺りを見回すと、学校ではなく先輩の家の近くまで来ていた。
先輩はそのまま私の絵を見つめる。...そしてふわりと優しく微笑んだ。

Gr「よく出来ていると思うぞ。」

『ほ、ほんとですかっ？』

なんだか嬉しくて先輩に抱き着く。
先輩はしっかりと私を受け止めて、これまで見たことが無い程楽しそうに笑った。
そんな先輩の横顔が、私達の真上できらきらと輝く月に似ていた。