怒り ページ6
.
ひたり。ローレンが静かに、私を見た。珍しいほどに温度がない目だった。
「それ、ふざけてんのか」
声が硬くて、導火線が切られていくことを悟った。なんで、怒ってんの。わからなくてなにが、と聞く。ローレンはぐ、と押し黙ってやりきれないように息を吐いた。憎々しげで困ったような灰色の瞳が、胸を突き刺す。
「どうもこうも、ないよ」
「……は、お前さそれもしかしてマジで言ってんの？」
「だって、事実じゃんか。私はオメガにはなれないんだから」
「バカ言うな。オメガがいいなら最初からお前のことなんて選んでるわけねぇだろ」
「そんな言い方、」
「うるせぇな、……っ、そんなに俺をイラつかせてぇのかよ」
「なんでそんな怒ってんの」
「ベータにゃわかんねぇわ」
苛立ちが走る言葉に、きゅっと唇をつぐんだ。
あーもう、ほんと、なんでこうなるんだろう。普通に生きたいだけなのに。普通に大切なものを目一杯大切だって言いたいだけなのに。……私は、ただ、私を見て笑う、好きな人とそばにいたい、だけなのに。
そこまで考えて苦笑いをした。したはずだった。口角がうまく、上がらなかった。
けれどそんな私に痺れを切らしたローレンが我に帰ったみたいにそっと腕を掴んだ。まるで、大切な宝物を抱きとめるような手で、息を呑む。なんで。番が現れたんでしょう。なんでそんな手で、まだ私を掴めるの。
「……あー。悪ぃ。今のは、」
「、私がオメガだったらよかった？」
「違うそうじゃねぇマジでごめん。さっきのは俺が悪い。マジで。無神経だったごめんな」
必死に言い募る彼の匂いが近くなる。嗅ぎ慣れたタバコの匂いが、色濃かった。泣きたくなる。でもそれって思ってたんじゃないの。そんな言葉が、出てこない。
「なあ、ゆるして。ほんとに、お前だけなんだって。わかるだろ」
「でも、」
「……なあ、あいしてるよ、」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 74人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
にーは - とっても面白かったです！確かにオメガバースのお話はアルファとオメガにスポットライトが当てられているけどベータへのスポットライトは当たり前だけどないですよね。でも、作者さんはベータにスポットライトを当てていてそれも面白いなと思いました。 (4月10日 22時) (
レス) @page8 id: 9b324e5474 (このIDを非表示/違反報告)
緋彩(プロフ) - 好きです。とても。 (4月9日 14時) (レス) @page8 id: 2bbba1a05d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：プロシオンの烙印 | 作者ホームページ：https://mobile.twitter.com/6zp7JIEaL24NfiM
作成日時：2023年6月18日 0時
