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第一章【部外者は舞台に上がる】 ページ5

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一つ、つまらない話をしよう。
ある女の生涯の話だ。

生きるためならばなんでもやってきた。
盗みに脅迫、裏切りも仇討ちも人を騙すことも、悪徳セールスから殺しまで。女は言葉巧みに利用し男は力で服従させる。にじり寄ってくるような闇を利用して歩いてきた。特に殺しというやつは肌にあった。木々が芽吹くようにさまざまなことを吸収していってもそれが染み付いていて、血を見ない日なんてなかったことをよく覚えている。
そのことを悔やんだことはない。出会ってきた正義感をこじらせた奴らに「おまえはおかしい」と指をさされても首を傾げてしまう。おかしい?私が?そんなのは関係ない。
裏の世界で生まれた私にとって、それは朝起きて顔を洗って飯を食うことと同じ当たり前だった。そういうふうに教えられてきたし、私自身そうやって生きることに違和感を感じたことはない。そう感じること自体が無駄なのだ。というか、感情ってなんだ?自分にとって利益があるかないか。その行為が問題なのではない、その後に得ることができる利益と被る損失。私に利益を与えてくれるならば泥水だって啜って見せよう。謂れのない罪だって被って見せよう。いつかよくしてくれた人であれ後ろから刺せるように、笑顔で切り捨てて見せよう。
それだけのことだ。なんの問題もない。そういえば周りは気味の悪いものを見るような目をしていた。ただ育ての親だけは、それでこそこの道を仕切るにふさわしいと褒めていたのをよく覚えている。正直、それすらどうでもよかった。
多分、私はどこかおかしいのだと思う。何を認識するにしても利益と損失、そこに至るまでの過程はどれだけのものかの演算が頭に浮かんでいく。揺り籠から墓場まで、という言葉があるが私は揺り籠から墓場まで、たとえ地獄に落ちたとしても奴らのいうような更生を成し遂げることはないのだろう。

そうやって生きてきて、私がその筋のトップに、殺し屋としての頂点へと手をかけた時、殺された。

人を踏み台にしてなんでもやってきた女が、自分の弟子に殺された。

そんな三流小説のような終わりを迎えた私は今、幸か不幸か新しい生を受けている。

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米の磨ぎ汁※低浮上(プロフ) - 面白い内容で惹き付けられました。ところでこの物語は名前固定なのでしょうか?名前固定では無いのなら名前変換が出来ません。 (2022年10月31日 19時) (レス) id: f1886f3e92 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:プロシオンの烙印 | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/6zp7JIEaL24NfiM  
作成日時:2022年10月5日 18時

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