刹那的オペレッタ【njsj】【knmc】 (ページ11)

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「それは、」
「僕はねぇ、やろうと思えば今ここに警察を呼んでもいいんです。それか魚の餌にして海に投げてもいい。流石に自分の部下をここまでやられては、僕も動かざるを得ない」
どうします？いい提案だと思うんですけど。
うそつけ、最初から選択肢などないだろうがと毒づきながら、銃を握りしめる。
「どうして、私にそれを言う」
「何故？何故って、貴女の力を買っているからですよ。貴女は凄い。一部始終を見ていましたが、何もかもが鮮やかでした」
それに、と男は笑う。
「一目惚れしたんですよ、貴女に」

ーーなので僕と結婚しましょう。

「は、？」
目を見開いた私に、男はさらに続けた。
「メリットばかりですよ？人を殺しても何も咎められない、それどころか評価されるばかりですし。それに僕の立場なら何もかもを揉み消すことができますからね。あと」
「あと」
「僕の護衛が欲しいので。いるはいるんですけど使えなくって困ってるんです。それで貴女がなればいいなと」
「なに、いって」
「あぁ、惚れた腫れたの話ですか？こんな嘘つきませんよ。メリットもない。けれど貴女が手に入るのならそれも悪くないなと思っているので。どうです？」
「･･････」
「ようはですね、欲しいんです貴女が。僕の後ろを任せるなら貴女以外いない。そう思うくらいには」
「イカれてるって言われるでしょう」
「えぇ、よく言われます」

笑いながらいうことでもないだろうが。そう吐き捨ててやりたくなった。くすくす。擬音で表せばそんな音がつく予測がすぐさま立てられる。そんな声。

「ほら、早く決めてくださいよ」

穏やかな声の中の緊張感。ここからどう切り崩せばいい。思考回路が千切れるほど急速に脳を回す。信じられるか？このまま売られる可能性は？ああくそどうする！舌打ちを漏らしたくなるのを堪え、目を閉じる。

わかっている。
本当はそれしか、方法はない。

「いいよ、乗るよその話」
「そうこなくては」
振り向くと、青年が立っていた。紫の髪に萌黄色の瞳の、愛らしい顔をした青年だった。にこりと微笑んだ青年は、こちらに手を差し出してくる。

「僕は剣持刀也といいます。貴女の名前は？」
「A。楯石A」
「それじゃあよろしくお願いしますね、Aさん」

その笑みは、実年齢を伺わせるあどけなさがあるというのに。しかし私の手にべっとりこびりついた血を気にせず嬉々として握り込む姿は悪魔のようであった。

【部外者は舞台に上がる】