昔の古傷 ページ15
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高校時代、私には付き合っていた男がいた。といってもなんで付き合ったのかと聞かれると首を傾げてしまうほどで、別に好意は抱いていなかったが。じゃあ何故付き合ったのかと聞かれると若気の至りとしか言いようがない。
そもそも付き合ってくれるか、と聞かれた時「いいか」と思った理由としては「人生経験になるかも」という浅はか極まりない理由だった。女子には人気の男だったし。今思えば馬鹿だなぁと思うし言ってやりたい。その男、浮気男だぞ。
最初の頃はそれなりに良かったと思う。しかしどんどん増えるデートの遅刻や誤爆、お金をせびったりマウントを取られたりとしていくうちにだんだんと嫌気がさしていった。せめてものいいところは、と探しても見つからないくらいだった。
そうしてやってきたあの日。家でデートしようと向こうから持ちかけてきたのを承諾して。そして長い道のりをえっちらおっちら歩いて行った先の家に合鍵を使って入って。玄関に並べられていたあいつの靴と、もう一つの可愛らしい小さな靴を見て、猛烈に嫌な予感がした。
なんとなく何が起こっているのか察しながらも、恐る恐る忍足で向かったリビング。そこでは、恋人であるはずの男とお姫様のような可愛らしい女の子が裸で絡み合っていた。
「あ、あ、駄目だよ、彼女さんくるんでしょ、ぉ?」
「いいじゃねぇか。どうせもうちょっと後だって!お前の方が大事だし」
「えぇ〜、彼女さんかわいそ、」
そう言って私をあげつらうようにきゃはきゃはと笑う二人にわかっていたことながら微妙な気持ちになって。それを黙って見つめる私に気がつかないでエスカレートしていくその行為に、何も言わずに立ち去ったことをよく覚えている。
そうして後日「別れよう」と連絡したら、普通に返されたことも、思い出として残っているのだ。
(まさかこんなところで会うなんざ、厄日かなぁ)
しかも、お前ら別れてないんだ。凄いな。現実逃避を繰り返そうとするが、そうは問屋が卸さない。
「なんで、」
「?」
「なんでこんなところにいるんですか、わたしとショウくんの邪魔をしないでください」
何言ってんだこの女、と素で思ってしまったのは許して欲しい。可愛らしい顔を怒らせて睨みつけてくる姿はお姫様を通り越した形相で、どうしたらいいのかわからなくなってしまう。いつの世も嫉妬に狂った女っていうのは怖いものだ。
しかし、「この元カレそんな名前だったわ」と考えられている時点で、自分も結構余裕なのかもしれない
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利き手(プロフ) - ずぎ......ずぎ.........なんかもう言葉で表せられないほどすきです......更新待ってます........... (4月25日 18時) (レス) @page26 id: cb93d75c77 (このIDを非表示/違反報告)
、 - この作品に一目惚れしました!!!更新頑張ってください!待ってます!! (6月11日 22時) (レス) id: b2a72ce1c2 (このIDを非表示/違反報告)
海月(プロフ) - コメント失礼します。少し前から拝読しているのですが、仕草や声の一つ一つに自然の意思が宿るような、人ならざる描写が美しく、惹きつけられました。今後二人がどのように交流していくのかが楽しみです。どうか作者様の無理の無い範囲で執筆頂ければ幸いです (2023年4月22日 2時) (レス) @page24 id: 9675cfd2c8 (このIDを非表示/違反報告)
ある(プロフ) - 更新本当にありがとうございます!!ずっと楽しみにしておりました、作者様のペースで進めて頂けると幸いです! (2023年4月21日 23時) (レス) @page24 id: 7187551de4 (このIDを非表示/違反報告)
ペペロンチーノ(25)(プロフ) - 更新待ってます! (2023年4月16日 15時) (レス) @page23 id: c1a1942ea9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:プロシオンの烙印 | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/6zp7JIEaL24NfiM
作成日時:2022年10月3日 16時