元カレ ページ14
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考えてもよくわからないことは、考えても仕方ない。天使に感じる恐怖感についてはそう思うことにした。美味そうにご飯を食べる姿を見る限り、悪い奴ではないのだ、多分。いや言語が通じないから分からないけど。
事きれるように眠った天使を運ぼうとし、そうして彼を拾った日にめちゃくちゃ大変だったことを思い出してやめた。正直、また筋肉痛になるのはごめん被りたい。
そう思ってタオルケットをかけておく。正直怪我をしている天使をこのまま放置するのは不安ではあるのだが、見る限り元気そうなのでとりあえず様子見だ。なんか翅が元気になってきている気がするのはなんでなんだろうなと思いながら立ち上がる。
(そういえば買い物に行かなきゃいけないんだった、天使も寝てるし行ってしまおうかな)
のんびりと考えて、出かける準備を始めた。
久しぶりに出た外は、いつもと変わらないように見えて少し違っている。それは私が仕事を辞めたからなのだろうか。マンションの多い、静かな街だった。ああこんなところだったな。そんなことすら気づかないほど、仕事に生きていたんだなぁ。風の音すら聞こえてくるような静寂の中、私は少しだけ気分良く歩いていた。
(いっぱい買えたなー食材)
これだけはこの10年働いてきてよかった。買いだめしてもそれなりにお金が残っているので、天使が完治する頃くらいまでは食っていけるだろう。それに、天使が食べてくれるようになったからいろいろなものを食べさせてやりたいし。半ばウキウキとしながら家路を急ぐ。
「あれ、お前」
だから、唐突に声をかけられた時にどう反応したらいいのか分からなかった。振り向くと、どこかニヤついた顔のチャラけた男と小動物みたいな女が二人でこちらを見ていた。
「げ、」
思わず低い声が出る。うわ、最悪だ。なんでこいつここにいるんだろう。顔を歪めて睨みつけると、その反応に気をよくしたようにねちゃついた笑みを深くした男は言い放った。
「げって、ひどくね?元カレに会えて嬉しくねぇの?」
「いや別に嬉しくないわ」
「そう照れんなよ、俺とお前の仲だろぉ?」
「どんな仲だよ別れてんだぞ」
「まーまー、つれないこというなよ」
「話を聞け馬鹿野郎が」
お前の浮気が原因だろうが、てか女の子放っておいていいのかよと毒づきながらちらりと男の背中に隠れてこちらを睨む女性を見遣る。そこにいるのが浮気相手であった少女だということに、その時ようやく気づく。
また面倒なことに、とため息を吐いた。
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利き手(プロフ) - ずぎ......ずぎ.........なんかもう言葉で表せられないほどすきです......更新待ってます........... (4月25日 18時) (レス) @page26 id: cb93d75c77 (このIDを非表示/違反報告)
、 - この作品に一目惚れしました!!!更新頑張ってください!待ってます!! (6月11日 22時) (レス) id: b2a72ce1c2 (このIDを非表示/違反報告)
海月(プロフ) - コメント失礼します。少し前から拝読しているのですが、仕草や声の一つ一つに自然の意思が宿るような、人ならざる描写が美しく、惹きつけられました。今後二人がどのように交流していくのかが楽しみです。どうか作者様の無理の無い範囲で執筆頂ければ幸いです (2023年4月22日 2時) (レス) @page24 id: 9675cfd2c8 (このIDを非表示/違反報告)
ある(プロフ) - 更新本当にありがとうございます!!ずっと楽しみにしておりました、作者様のペースで進めて頂けると幸いです! (2023年4月21日 23時) (レス) @page24 id: 7187551de4 (このIDを非表示/違反報告)
ペペロンチーノ(25)(プロフ) - 更新待ってます! (2023年4月16日 15時) (レス) @page23 id: c1a1942ea9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:プロシオンの烙印 | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/6zp7JIEaL24NfiM
作成日時:2022年10月3日 16時