平和が崩れ去る前兆 ページ4
No side
男は妖怪の類かと思い、即座に防御の構えをしたが、疑問を感じていた。よくよく考えれば、妖怪なら陰陽師の血を引いた自分が気配を感じない筈はないのだ。
結弦「君は、一体何者だ…？」
その一言に必死に何かを伝えたそうなのだが、喋ることが出来ないのか頻りに瞬きを繰り返すだけのその生き物。
陰陽師の血筋とはいえ、正式な儀式を受けていない彼はまだ陰陽道を使えないでいた。あと1年早く生まれていたら、陰陽道を使って話を聞けただろうと思うと、彼の心はとても悔しい気持ちで溢れていた。
結弦「あー畜生、なんっとか出来ねぇかな……」
どうにかして意思疎通が出来ないか頭を回転させてみるものの何も浮かばず、頭を抱えたその時
「……………！！！」
結弦「ッ！？うわっ！」
突如としてぐるぐると回り始めた光の生き物は、近くにいたあの桃色の蝶に重なると、目が眩むような強い光を放った。
咄嗟に閉じた瞼を開けた瞬間、目の前にあった光景に思わず目を見開いた。
なんと光の生き物と重なった桃色の蝶は、美しい煌めきはそのままに蛾に変化し、羽の部分に光の生き物の目がくっついていたのだ。
突然起きたこの現象に驚愕していた刹那、先程まで何かを訴えようとしていた瞳がギロリと自分を睨む。
睨んだ瞳にだんだんと殺気が滲み出し、遂に目の前の男に襲いかかった。
ギリギリで交わした男は一目散に街に向かって走り去っていった。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−
全力疾走する男の頭はパンク寸前だった
先程目の前で起きた見た事も聞いたこともない現象と、光の生き物が頻りに訴えようとしていたこと、力が使えない今の自分への怒りと悔しさ、其れ等以上に1番彼の頭の中を占めていたのは………
“今まで感じたことがない、もの凄く強い妖気”
妖気をだけで全身の毛が彼程まで逆立ち、心臓に電流が走るなど、光の生き物と融合して生まれたあの妖怪は明らかに異常。仮に陰陽道が使えたとして、あの妖怪を封じれたかと考えたらとてつもない吐き気を催してしまう。
走るどころでなくなった彼は、近くにいたある男に話しかけられるまでへたり込んで動けずにいた。
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作者名：鰤しゃぶ | 作成日時：2019年4月1日 0時
